和文タイプの思い出

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2015-11-26

今日は寒い日だった。非常勤講師の仕事で大阪に方面に向かう。電車の中にたくさんの人がいるが、ほとんどの人はスマホをいじっている。私も普通はスマホをいじっているのだが、今日は充電が十分でなくて、画面を長時間読むことはできない。それで、手持ち無沙汰なので週刊誌『週刊文春』を購入した。400円である。

その週刊誌を電車の中でいろいろ眺めてみたが、特に面白いものではない。やはりスマホで好きな記事を読んでいく方がはるかに面白い。スマホならば、いくらでも記事を選択できるし、連想の赴くままにネットサーフィンができるのだ。

出版業界はこのスマホの出現にどのように対抗するのだろうか。出版不況という言葉はよく聞かれる。十年ぐらい前からそんな言葉があったが、その当時と比べてスマホの性能はアップしたのであるから、出版不況はさらに深刻になったと思う。

電子化が著しい時代故に、多くの仕事がなくなった。私は昔会社員をしていたことがあったが、そのときの仕事の一つに取締役会の議事録を和文タイプの事務所に届けて、それをきれいにタイプ打ちしてもらう仕事があった。

何でも、商法には毎月一回の取締役会の議事録を保管して役員全員から捺印してもらうことを定めてあるのだ。であるから、議事録をきれいにタイプ打ちして捺印欄をつくり、そこに印鑑をもらうのである。私の仕事は議事録を和文タイプしてくれる事務所に届けるのだ。その事務所内では、中年の女性が一列に並んで和文タイプを器用に動かしながら書類を作り上げていた。

急に私が和文タイプを打たなければならないことが数回あって自分で打ったこともあった。これは慣れると結構はやく打てるようになる。音読みが同じ漢字が集まっているので、このあたりだろうと目安をつけて漢字を選んでいくのだ。もちろんワープロの方がはるかに早くきれいにできあがる。なんと言ってもデータとして保管できる点が便利である。

あの和文タイプを仕上げてくれる事務所はもう営業は閉じてあると思う。ずらりと並んで黙々と働いていた女性たちはどうなったのか。あの頃は和文タイプの仕事は女性向きの給料のいい仕事だともてはやされていたのだ。あの女性たちは他の仕事を見つけたことと思うが、とにかく、科学技術の進歩は、古くからの仕事に従事していた人から生きる糧を取り上げてしまう。

時代を先読みして先手先手を打っていくべきと人は言うけれども、先の時代は誰にも分からない。よく人は「ほれ、俺の言ったとおりになったろう、俺は時代を読み取る力があったのだ」と言うが、まぐれで当たることもある。

出版業界、書店、カメラ店、印刷所、レコード店、貸しレコード店などの将来は危うい。自分の小学生の頃は、紙芝居や活動写真、貸本屋などがあったが、今は消えてしまった。時代の先を読まなければならないので、今の若い人は大変だなと思う。でも、それだけ面白い時代に生きているのだとも思う。

M_A224

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