訪日外国人旅行者数(観光庁)

日本にいる外国人の数が増えているといわれている。たしかに、我々の身近でも外国人の数を見かけることが多くなった。具体的に、どのような数字になっているのか、どこの国の人が多いのか知りたいと思う。

訪日外国人旅行者

観光庁は、訪日外国人旅行者数に関する統計を出している。今は2018年の4月だから、2017年はどうなったのか知りたいところだが、観光庁のサイトを見ていると、2016年までの数字しかない。統計の処理にかなり時間がかかるようだ。確定値は2016年までのようだ。観光庁からのグラフをスクリーンショットしたので、下に貼り付けておく。

 

2016年は2,404人の外国人が日本を訪問している。しかし、これは延べ人数である。外国人が1年に数回訪問すると、そのたびにカウントされる。海外に行く外国人よりも、日本を訪れる外国人の数の方が上回るようになった。

2017年に関しては推計値と、それから数か月遅れて暫定値がでるが、それしか、まだ公刊されていない。その暫定値によれば、以下のようになっている。総数が287万人だ。その内訳はアジアがほとんどで、上位の4カ国は、中国(734万人)、韓国(714万人)、台湾(456万人)、香港(223万人)であり、その他の国は、アメリカ(137万人)である。やはりアジアからの旅行者が多い。

訪日外国人旅行者の定義であるが、入国カードの中から、滞在が三ヶ月以下の人をカウントしていると想像する。

在留外国人数との関係

在留外国人統計が法務省(入国管理局)から発表されている。在留外国人統計は、先日の自分の記事でも報告していたが、現在は247万人である。在留外国人とは日本に3か月以上滞在する外国人が対象である。

両者の関係は、滞在が3か月以下ならば、フローの面から見てゆく。つまり出入りをカウントする。滞在が3か月以上ならば、ストックの面から、つまり現時点で何人いるのかをカウントしているのである。

この両者の数字を見ることで、現時点での外国人の数についてある程度の予想がつく。

言語的な問題

どちらの統計も英語圏以外の人の数の方が多い。しかし、一般的には、外国人の増加=グローバル化=英語化という風に捉えられることが多い。たしかに、若い旅行者の多くはある程度の英語力を持っているので、英語でのコミュニケーションが役立つことが多い。

ただ、日本に在留する外国人の場合は、コミュニケーション言語は日本語であるので、どのような日本語をどのように教えるのか、どのように言語サービスを提供したらいいのかという問題になってくる。

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のぞみ教室を訪問した。

はじめに

美濃加茂市にある外国人児童のための日本語教室である「のぞみ教室」を訪問した。

実は、のぞみ教室は1年ほど前に訪問したことがあり、その時の報告をこのブログの記事「美濃加茂市を再度訪問する」に投稿してある。その時の訪問は科研費による研究の一環であったので、報告書としてもまとめて、「美濃加茂市市民課と国際教室訪問の報告」として、これまた、このサイトに投稿してある。よろしかったら、そちらも参照していただきたい。

今回の訪問は、その後の変化の状況を知りたいと思い、教室の先生がたが忙しいのを承知の上で頼み込んだものである。許可いただいた市の教育委員会の方とのぞみ教室の講師の方々にはお礼を述べたい。以下、概要を述べたい。

のぞみ教室にコンタクトを取る。

前回は同僚の方にコンタクトをとっていただいたのだが、今回は私が直接コンタクトをとって、訪問の許可を頂くことになった。のぞみ教室は美濃加茂市の古井(こび)小学校の敷地内にあるので、小学校に電話して訪問の許可をいただこうとした。しかし、のぞみ教室は美濃加茂市の教育委員会の管轄にあるとのこと、たまたま敷地は小学校の中にあるのだが、許可をいただこうとするならば、教育委員会に連絡をするべき、と案内された。

教育委員会に連絡を入れると担当のKさんから訪問の許可をいただいた。さらにはKさんはのぞみ教室に、当日は先にゆき、私を待っていてくれる、ということであった。ここでKさんとしたが、本当は実名を記しても問題ないと思うのだが、とにかく最近は個人情報の管理がうるさく言われているので、Kさんと記しておく。Kさんと相談の上で、3月15日に訪問することが可能になった。

のぞみ教室を訪問する。

この日は小学校は卒業式のようで保護者の車が多いようであったが、何とか駐車するスペースを見つけた。Kさんはすでにいらしていて、駐車スペースまで誘導して貰った。

教室内でF先生に挨拶をした。F先生は日系ブラジル人で、ボルトガル語を母語とするが、日本語も堪能であり、国際教室のまとめ役としては最適の方であった。

先生方は、コーディネイターの方二人がまとめ役であり、あと10名ほどの講師が臨時職員として教えられている。講師の方々の言語能力は、だいたい2、3言語を話される方々であった。

教室内はそんなに広くはない。職員室が一つ、大教室が一つ、小教室が一つと合計3つの部屋に分かれている。

この教室は訪問者が多いので、子どもたちの親御さんからには、あらかじめその子との説明をして、撮影の許可をいただいてあるそうだ。ここでは、ただ、できるだけ子どもたちは後ろ向き、せいぜい横顔を撮影するように試みた。ただ、全員がそうなっているとは限らないのだが。

大教室で各先生方が教えられている。
一斉授業
一斉授業で教えられている。
のぞみ教室
小教室、主に低学年用の教室だ。

私が入った時は、グループ別の指導であった。それから一斉授業になった。グループ別になったり、一斉になったりと、最も効率が良い指導法が試みられている。

この教室は平成17年に前身のエスぺランザが出来上がり、それが平成19年に現在ののぞみ教室になった。

この子どもたちであるが、だいたい6ヶ月から3ヶ月ほど滞在する。6ヶ月以上いても日本語の能力は頭打ちになるので、それならば、普通教室に入って一般の日本人の児童と一緒に勉強したほうがはるかに伸びるそうだ。

子ども達のバックグラウンド

子ども達であるが、現時点では29名である。主にブラジルとフィリピン国籍の子どもが多いそうだ。一時は日系ブラジル人の数が非常に多かったが、リーマン不況や本国の好景気のために、数が減ったそうだ。でも、最近また増えているそうである。特徴としては、日本に定住を希望する人が増えていて、その分日本語の習得に気合いが入っているそうである。

フィリピン人の子どもさんは、ブラジル人の子どもさんほど熱心ではないそうだ。フィリピンの場合は本国とのつながりがまだ強くて、心が母国の方に向いている点が理由の一つだ、との説明であった。

中国人の子どもさんは一人だけで、この地域ではそんなに多くはないとのことだ。

将来は、ベトナムからの子どもさんが増えそうだと予想されるそうた。現状ではまだ一人もいないが、今後は増えそうだとの説明があった。

教室の移転

こののぞみ教室だが、現在の教室は、環境があまり良くない。昔の体育の物置を改良したものである。天井は音の反射が強くて、子どもたちの音声が互いに聞こえて集中しづらいそうだ。

天井は倉庫用にできている。

現在、30メートルほど離れた敷地に建物建設の準備が進められている。秋頃には、完成するそうだ。その時は、冷暖房が完備して各部屋は音が漏れることも少なくなるようだ。

おわりに

そんなことで、午前と午後の2回に渡って訪問をした。日本に増えつつある外国人児童の日本語問題に取り組んでいる最前線を見せて貰った感じがする。

多忙にもかかわらず、対応していただいた美濃加茂市の教育委員会のKさんとのぞみ教室のF先生には厚く御礼を申し上げたい。

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佐藤和之教授(弘前大学)よりメールをいただく。


3月11日は7年前に大地震が起こった日である。この日は数万人の人々の命が失われた日として我らの記憶の中に残しておかなければならない。

本日、やさしい日本語の開発に携わっている佐藤和之先生からメールをいただいた。それを紹介すると共に震災の犠牲者の人たちのご冥福を祈りたいと思う。

研究者の皆様
 このメイルは、「やさしい日本語」に理解を示してくださる研究者の皆さんへ、Bccでお届けしています。

 東日本大震災からまる7年に際しての減災のための「やさしい日本語」資源公開のお知らせとお願い

ご挨拶と御礼
 弘前大学の社会言語学研究室です。この11日で東日本大震災からまる7年になります。被災地の皆さまに改めてお見舞い申し上げます。研究室の教員とゼミ生一同は、東北にある大学として被災地の復興を願い、これからも被災地や「やさしい日本語」で住民支援をしていくとする皆さんの手伝いをしていく確認をしました。
 さて、研究室では本年も「やさしい日本語」資源を公開しましたので、お知らせします。

3月11日に公開した新たな「やさしい日本語」資源
『「やさしい日本語」で表現するカタカナ外来語・アルファベット単位記号用語辞典(カテゴリー㈵対応)』

 カタカナ外来語(以下カタカナ語)やアルファベット単位記号(Wi-Fiなどの略称含む)は、日本語にとってなくてはならないことばです。これらは、自然な日本語として活用されているため、災害時にも多く使われます。日本語として規範的な新聞記事でも「ニーズ」や「コミュニティー」「m(メートル)」「Wi-Fi(ワイファイ)」といったカタカナ外来語やアルファベット単位記号を使っています。
 一方「やさしい日本語」で外国人に情報を伝えようとすると、カタカナ語の言いかえが必要かどうかの判断や言いかえが必要なときにはその表現を考えなければならないなど、一分、一秒を争う災害時でも、カタカナ語の扱いに時間をとられたり、言いかえの表現が思いつかないため、そのまま外国人に通じないカタカナ語を使ってしまうということがありました。ライフライン(級外)が典型ですが、原語と意味が違っていますのでlife lineを母語、あるいは生活語とする外国人にとって難解なだけで無く、誤解されてしまう危険もありました。

 そこで研究室では、災害発生から72時間に必要となるカタカナ語を「やさしい日本語」として使えるかどうか判断し、もし使えないときはどう表現するのが良いのかを例示した用語辞典を作りました。「やさしい日本語」を使って被災外国人の支援をしようとする行政職員やボランティア団体の皆さんが活用することで、災害下でもより早く、正確な「やさしい日本語」での情報伝達が可能になりました。

いつ、どういう方法で公表したのか
 公表物は、3月11日(日)の午後2時46分(東日本大震災の発生時刻です)に、社会言語学研究室のホームページで公開しました。研究室のホームページアドレスは以下の通りです。検索エンジンをお使いのときは「弘前大学 やさしい日本語」とご入力ください。
http://human.cc.hirosaki-u.ac.jp/kokugo/

お願いがあります
 災害時の言語支援を私たちの力だけでするには限界があります。本日、ご案内を差し上げました研究者の皆さんには、「やさしい日本語」で情報を伝える意義をご理解いただき、おそば近くの自治体やNPOの皆さんと一緒に考える機会や時間を作っていただけましたら嬉しく思います。そのとき、本日のような資料が用意されていることにも触れていただけましたら幸いです。
 阪神・淡路大震災から始められた、災害時の外国人に「やさしい日本語」で災害情報を伝える研究は24年目になります。社会言語学研究室は、阪神淡路大震災や新潟県中越地震、東日本大震災での言語的経験を風化させることなく未来につないでいくつもりです。 お力添えを宜しくお願いいたします。

    2018年3月11日

                    〒036-8560 青森県弘前市文京町1
                  弘前大学人文社会科学部社会言語学研究室
                              ゼミ生一同
                             教 授 佐藤 和之
kokugo[a]hirosaki-u.ac.jp(ゼミ生専用)

あの地震は7年前の話になってきた。いつかは風化するかもしれないが、できるだけ私たちの記憶の色褪せない箇所にしまっておこう。

科研の会議が京都テルサで行われた。


9月22日の午後3時半から、京都テルサ(京都府民交流プラザ)で科研の拡大会議が行われた。この科研グループの研究の題目は、「高度翻訳知識に基づく高品質言語サービスの研究」である。研究代表者は佐良木昌先生(明治大学・研究推進員)であり、分担者として阪井和男先生(明治大学・教授)と私(河原俊昭、岐阜女子大学:特任教授)である。連携者として、他に3名の研究者の方々が登録されている。

今回はこの科研のメンバーの人に限らず、研究会「思考と言語」のメンバーも含めて10名以上の参加になった。初めに、研究代表者の佐良木先生から挨拶があり、同氏による研究発表があった。発表の題目は、「高度翻訳知識に基づく高品質翻訳サービスの研究」であった。

興味深い点として、collocations の条件として、語と語の結合の強度に従って free combinations – collocations – similes – idioms といくつかのステージを想定していることだ。その強度を測定する規準として、頻度、共起制限、意味の特殊化があるそうだ。私見だが、翻訳をしようとする場合、free combinations では構文分析から入ってゆく。idioms になると一対一対応で翻訳が行われる。問題はこの両者の中間に位置するcollocations の訳し方だ。idiom ほど固定化されていない。しかし、ある程度の自由度がある。これは翻訳を行おうとする場合は、両者の狭間にあるのであり、かなり厄介だなと感じた。

次は河原の発表で、「観光英語を中心とした高品質な言語サービスの研究」というタイトルであった。内容は、日英語翻訳の場合、直接翻訳を行うとするとかなり難しいので、それぞれをいったん、Easy Japanese, Easy English に組み直して、Easy Japanese – Easy English どうしの翻訳にした方が、つまり、プロトタイプ同士の翻訳にした方がスムーズになるのではという問題提起であった。

そして、阪井和男先生の「コミュニケーションの創発とサービス創新についての研究」であった。阪井先生は明治大学のサービス創新研究所の所長である。創発と創新という概念はかなり目新しいものである。今度機会があれば、じっくりとこの二つのあたらしい「概念」についてお聞きしたい。

テルサ建物
宮崎先生の発表

そして、宮崎正弘先生(新潟大学名誉教授、株式会社ラングテック社長)より、「和文単文の英訳指向書き換えー日英単文翻訳の高度化を目指してー」という発表であった。翻訳の技術の日本における歴史やその問題点などを詳しく説明された。go blind, go mad のようなイディオム的な語の翻訳も一対一対応での翻訳ではなくて、できるだけ意味的な情報、例えば、「go + 形容詞の場合はネガティブな意味合いを含む」等の情報を翻訳システムには入れていきたいとのことであった。

その他、いろいろと興味深い発表はあったが、割愛させていただく。

多文化社会専門職機構が設立された。

3月13日に、N先生と京都駅構内の喫茶店で会った。N先生とは1年ぶりぐらいで、本当に久しぶりであった。私は前任校を定年退職してからセミリタイアのような状態だが、N先生は、バリバリの現役で活躍されている。

N先生は現在、多文化社会専門職機構なる組織を立ち上げている。去る2月26日に、明治学院大学において、第一回多文化社会実践研究フォーラムが開催されたとの話をうかがった。

学会を立ち上げるのではなくて、機構を立ち上げるとのこと。このあたり、学会というアカデミックな分野に限定されないで、より実践的・行動的な組織として動こうとする意図があるのだと推察する。

ゆくゆくは多文化社会に関する専門職を認定していこうとの考えのようであるが、これは非常に革新的なことである。多文化社会に生じるさまざまな問題に対応することができる専門職を育てていこうという考えは非常に新鮮に思えた。この機構のさらなる発展を祈念する次第である。

なお、全国47都道府県の言語サービスを網羅した研究を行ってみたいとの話になった。N先生は今年、ある財団に応募して研究費を獲得したいと意欲的であった。もしも、この応募が採択されれば、各地の言語サービスの実態を実地調査するわけであり、その資金が確保されたことになる。調査研究が全国的に実施されて、全体をまとまれば非常に有意義な調査になる。応募が認められますようにと願う次第である。


さて、翌日の3月14日は、京都駅近くのキャンパスプラザ京都で、「言語サービス」に関する科研の研究者の集まりがあった。私は連携研究者としての資格で参加させてもらっている。当日は、私は岐阜県の美濃加茂市の外国人の子ども達の教育環境について発表した。日系ブラジル人達の置かれている教育環境について、市役所を訪問してお聞きしたことを主にまとめたのである。美濃加茂市はこれからも何回も訪問して、調査を深めてゆきたい。

なお、その後、科研の研究のテーマとして、Easy English について考えてみたらという話になった。日本にいる外国人の方々が災害などの非常時には「やさしい日本語」を使うことが現在は提唱されている。

その考えを延長して、日本語の最低限の知識もない外国人を支援するために、Easy English とい概念が使えるのではという問題意識の提唱である。これまた、面白い考えであり、今後の数年間をかけて深化できればと思う。

「やさしい日本語」と6年前の東日本大震災

6年前の昨日に東日本大震災が起こったのだ。その時には、日本人だけではなくて、外国人も同様に大きな被害を受けた。これは神戸の大震災の時も同じであった。

大災害の時には、日本人たちでも災害情報を十分に入手できない。ましてや外国人達にとっては、必要な情報が彼らの元に届かないことが多い。そのことが災害を拡大した面がある。そのことの反省から、必要な情報が外国人にできるだけ速やかに届くようにと「やさしい日本語」の活用が提唱されたのである。

今回は「やさしい日本語」の研究者の第一人者である、佐藤和之先生(弘前大学教授)からメールをいただいたので、ここに紹介して、皆様が「やさしい日本語」への関心を深めて、さらに外国人の方々の支援の手を伸べられることを願う次第である。以下は佐藤先生からのメールである。


東日本大震災から6年目に際しての減災のための「やさしい日本語」資源公開のお知らせ
このメイルは、「やさしい日本語」に理解を示してくださる研究者の皆さんへ、Bccでお届けしています。

ご挨拶と御礼
 弘前大学社会言語学研究室(教授 佐藤和之)と東北大学知的通信ネットワーク工学研究室(教授 伊藤彰則)です。きょうで、東日本大震災からちょうど6年になります。弘前大学も東北大学も同じ東北にある大学として被災地をかわらず支援してまいります。
阪神・淡路大震災から始められた災害時の外国人に「やさしい日本語」で災害情報を伝える研究も22年目ですが、「やさしい日本語」を使った支援は皆さんからの理解を得られ、広く使われるようになりました。また、プラグマティックな言語研究のあり方として、言語研究者の皆さんからの理解をいただけていることも嬉しく思います。本日は少々長いメイルになりますが、お付き合いください。

 本日、弘前大学の社会言語学研究室と東北大学の知的通信ネットワーク工学研究室では3編の「やさしい日本語」資源を公開しましたので、お知らせします。

『生活情報誌作成のための「やさしい日本語」ガイドライン
 ~街の外国人に生活情報を伝えるために・カテゴリーⅡ~』について
多くの自治体と外国人支援団体が「やさしい日本語」を災害時の情報伝達手段として使うようになりました。2016年12月の活用数は全国各地で約700件でした。大きな広がりをみせる「やさしい日本語」ですが、じつは、それらの多くが全文ひらがな書きだったり、漢字にルビを振っただけだったりなど、読み手の理解を考慮していない文体が多いという現実も生じていました。情報を伝える側は「やさしい日本語」での文作りに日頃から慣れていることが必要です。不慣れだと、災害発生時に肝心の避難や注意喚起などの情報を的確に伝えられないという問題が生じるためです。
そこで研究室では災害発生からの72時間に、命を守る情報を確実に伝える「やさしい日本語」をカテゴリーⅠ(CATⅠ)、日頃からの生活情報を伝える「やさしい日本語」をカテゴリーⅡ(CATⅡ)として、使用語彙や文規則を使い分けることにしました。2016年の3月には、CATⅡで使う語彙6850語を確定し、『生活情報誌作成のための「やさしい日本語」用字用語辞典』として公開しました。本年は、それらを使って生活情報を伝える文規則を提案することにしました。それが、この『生活情報誌作成のための「やさしい日本語」ガイドライン』です。CATⅡ用に新たな14の規則を定めました。この規則に従うと、外国人住民の80%以上が生活情報を理解する文体で伝えることができます。このときの外国人住民ですが、CATⅠの対象外国人より少し日本語能力が高く、辞書などを使いながら雑誌などを読める程度の人たちです。日本語能力試験でいうとN2,N3(旧試験2級)程度の外国人です。
 ガイドラインは、自治体や外国人支援団体の皆さんが、「やさしい日本語」を用いた生活情報誌を作成できるようになることを目的に作りました。「やさしい日本語」の活用を災害時だけでなく生活情報誌へ広げることで、情報を伝える側と受け取る側の両者が「やさしい日本語」に日頃から触れることができ、災害時の情報伝達がよりスムーズになると考えました。

『さくさく作成!「やさしい日本語」を使った緊急連絡のための案文集 ②
 〜災害時におけるスマートフォンでの連絡編〜』について
社会言語学研究室は「やさしい日本語」研究を通じて、様々な情報の提供方法や掲示物、放送用案文等を作成、提案してきました。阪神淡路大震災から22年が経ち、以前にはなかった情報の提供手段としてスマートフォンが注目されています。スマートフォンの個人保有率は、日本で53%、海外(日本、米国、英国、フランス、韓国、シンガポールなど)で70~80%(総務省調べ)とされています。そこで研究室では災害時の緊急情報をスマートフォンで実現できないかと考え、スマートフォン対応の案文集を作成しました。災害時にスマートフォンメールを活用する利点として以下の5点を考えています。
①緊急性の高い情報を迅速に伝えることができる
スマートフォンメールによる情報伝達は大勢の人へ一斉、かつ迅速に配信できますのでとても有益です。また、掲示物や広報車等による伝達より幅広い範囲へ一斉、かつ即座に伝達できる点も特徴的です。
②情報を後から見返すことができる
掲示物や広報車などによる放送は、その場その瞬間だけの情報で、後になってから別の場所でもう一度確認することはできません。しかし、スマートフォンメールを使った情報なら配信された段階で各自のスマートフォン端末に保存されますから、それぞれが必要な場面で必要になったときの確認が可能です。
③より詳細な情報を伝えることができる
掲示や音声での情報は、読みやすさや聞き取りやすさを重視しますので、自ずと少ない情報量にならざるを得ません。しか、スマートフォンメールなら、少々情報量が多くとも、それぞれの自由な時間に必要な部分だけを読むことができます。また日本語が得意な仲間にそれを見せて尋ねることもできます。
④次々に変わる情報をリアルタイムで発信できる
災害時は状況が次々に変わります。掲示物や放送では、見たり聞いたりできる範囲が限られてしまいますから、次々と変わる情報に合わせて伝えることは困難でした。スマートフォンメールは幅広い範囲の個々人に向けて素早く届きますので、次々に変わる情報を発信するのに適しています。
⑤避難所にいない被災者でも最新の情報を受け取ることができる
スマートフォンメールという媒体の特性から、指定避難所にいない被災者でも配信を受けることができ、掲示物より詳細でリアルタイムの情報を誰でも円滑に受け取ることができます

「『やさしい日本語』作成支援アプリケーション『やんしす(YAsasii Nihongo SIen System)』」について
「やさしい日本語」は、日本人にとってほかの外国語よりも作成しやすいものですが、一般の方にとっては、どのような日本語が「やさしい日本語」なのか理解しにくいものです。そのため、日本語で文を作成した時に、外国人に代わって文のやさしさを教えてくれるアプリケーションが「やんしす(やさしい日本語支援システム)」です。
我々のグループは、2008年から「やんしす」の開発を続けてきました。最新版の「やんしす」は、次のような機能を備えています。
①文章を入力した場合に、そのわかりにくい点を指摘します。文章のわかりにくい点を修正することで「やさしい日本語」を作成することができます。
②作成した文章のわかりやすさを数値化して表示できます。単に「わかりやすい」「わかりにくい」だけでなく、どの程度のわかりやすさなのかを直感的に把握しやすくなります。
③音声合成システムを内蔵しており、「やさしい日本語」による音声アナウンスを作成することができます。
「やんしす」は、次のURLからダウンロードしていただけます。また、Android版はGoogle Playからインストールすることが可能です。⇒ http://www.spcom.ecei.tohoku.ac.jp/YANSIS

どこで見られるのかとお願い
 これら3資源のうち、『生活情報誌作成のための「やさしい日本語」ガイドライン~街の外国人に生活情報を伝えるために・カテゴリーⅡ~』と『さくさく作成!「やさしい日本語」を使った緊急連絡のための案文集 ②〜災害時におけるスマートフォンでの連絡編〜』は、3月11日の正午に弘前大学社会言語学研究室のホームページで公開しました。ホームページアドレスは以下の通りです。検索エンジンをお使いの場合は「弘前大学 やさしい日本語」と入力ください。⇒ http://human.cc.hirosaki-u.ac.jp/kokugo/
 また「『やさしい日本語』作成支援アプリケーション『やんしす(YAsasii Nihongo SIen System)』」は東北大学知的通信ネットワーク工学研究室のホームページで公開しました。ホームページアドレスは以下の通りです。検索エンジンをお使いの場合は「東北大学 やんしす」と入力ください。⇒ http://www.spcom.ecei.tohoku.ac.jp/YANSIS

 最後にお願いがあります。災害時の言語支援を私たちの力だけでするには限界があります。本日、ご案内を差し上げました皆さまには、「やさしい日本語」で情報を伝える意義をご理解いただき、おそば近くの皆さんと一緒に考える機会や時間を作っていただけましたら嬉しく存じます。そのとき、本日のような資源が用意されていることにも触れていただけましたら幸いです。
 私たちは、阪神淡路大震災や東日本大震災での言語経験を風化させることなく未来につないでいきたいと考えています。お力添えを宜しくお願いいたします。

                        2017年3月11日

                             〒036-8560 青森県弘前市文京町1
                             弘前大学人文社会科学部
                                社会言語学研究室ゼミ生一同
                             教 授 佐 藤 和 之
                             0172-39-3227(佐藤直通)
                             kazykis@hirosaki-u.ac.jp(佐藤直通)

やさしい日本語ツーリズム

雑誌 Travel Journal (2016-10-17) の記事「外国人観光客は話したがっている」(著者:吉開章)は非常におもしろい記事だったので、紹介したい。要旨は以下の通りである。


日本に来る外国人観光客を迎えるには英語で行うべきだ。あるいは、その観光客の話す言語、中国語、韓国語、タイ語などで観光に関する言語サービスを提供するという認識が日本人の間にゆきわっっている。しかし、中には日本語でコミュニケーションを行いたいと希望する観光客もいる。

韓国・台湾・香港には多くの日本語学習者がいる。彼らは趣味的に日本語を学んでいるが、日本旅行の際には自分の日本語能力を試してみたいと考えているのである。彼らは、言葉の不便さを楽しみたい、勉強した日本語をドキドキしながら試みてみたいと考えているのである。

日本人は英語教育や多言語対応に奔走して、それらにコストをかけすぎている。日本に来る外国人観光客のかなりの数、近隣のアジア諸国が多いのだが、かれらは日本語にある程度慣れている。その力を活用して「やさしい日本語ツーリズム」を開発すべきである。

ただ、日本語を押しつけであるべきではない。あくまでも観光の目玉の一つとして提供すべきである。それに興味を示してくれる観光客にのみ提供すればいいのだ。

日本は高齢化社会となりかってのような経済成長は望めない。しかし、まだ世界的には日本はブランドである。そして日本語もブランドである。日本がフランス級の観光立国になれるかもしれない。そのための一つの可能性として「やさしい日本語ツーリズム」がある。


だいたい、以上のような趣旨である。私自身は日本に定住する外国人にやさしい日本語を提供することは、大切なことと認識していたが、外国人観光客にも提供できる可能性があることを知っておもしろいと思った。