春田勝久先生の思い出

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2015-03-25

先日、研究者仲間(佐良木昌さん)が上洛してホテル・モントレーで私と打ち合わせをした。その時の相談の一つは春田勝久先生の残された資料をどのように活用するかという内容であった。

春田勝久先生は私どもの恩師である。英語表現学会の発表大会で知りあった仲間たちが、春田先生の研究に関心を持ち、いろいろと教えてもらいながら、研究の輪を広げていった。それは今から30年ほど前の話である。当時、ようやく普及し始めたメーリングリストを利用して活発な議論を繰り広げた。その中には、先般、電車の中で急逝された柴田勝征さんもメーリングリスト仲間であった。そのメーリングリストは「春田コーパス」と名付けて会員たちは情報交換をしあったものであった。

その頃、私は春田先生にパソコンの重要性を説いていた。これからの時代はパソコンを使っての研究が必要だからと一生懸命に説得したものであった。そのころの先生の発表は手書きの資料を配布して行っていた。先生と一緒に電機店に行き、パソコン一式を選んだあげたり、また先生のご自宅でパソコンの設定のお手伝いをしたことも懐かしい。

その頃で、すでに相当のお年を召されていたのだが、それ以来、春田先生は熱心にパソコンの使い方を勉強された。やがて、メールを使い始めご自身の資料をデジタルで管理されるようになった。

春田勝久先生は北陸地方の大学で教鞭をとられるかたわら、熱心に英語の本を読み、面白そうな語法を見つけるとカードに書き写していた。先生の40年以上の読書の中で作成したカードは数万枚以上になると思われる。項目ごとに管理されておられた。私は「形容詞の配列」というテーマで論文を書いている時に、先生からたくさんのカードをお借りして参考にしたことがあった。名詞をどのような順番で形容詞が形容するかという点で、先生の先駆的な資料収集はとても参考になった。

その後、先生の資料を基にして、参考書を執筆しようとの話が持ち上がり、佐良木さんと私が分担執筆をして、先生が全体的な監修することになった。この当時、先生はすでに胃瘻で栄養補給をされており、体調は万全ではなかったが、原稿全体に熱心に目を通してくださり、的確なコメントをたくさんいただいた。この執筆は数年がかりであったが、2010年に、『大学生のための英単語・文法ノート』として明石書店から発刊された。が、春田先生は発刊から数か月で他界された。先生の生きているうちにこの本がなんとか刊行されて、その点は良かったと思うが、先生が監修の作業をされたことで寿命を縮めたのではとも考えたりする。

2009年に、佐良木さんと私とで最後に先生の家に訪問した時は、先生はかなり痩せられていたが、元気で語法に関する自分の発見を我々に語ってくれた。当時はすでに胃瘻という形で栄養補給をされていたのだが、自宅の勉強部屋には語法に関する本をたくさん積まれて、相変わらず熱心に研究をされていた。その姿には鬼気迫るものを感じた。

先生の他界された後は、その資料一式は先生のご遺族の方のご好意で我々が譲り受けることになった。ひとまず、佐良木さんの自宅の研究室に置くことになった。その後、その資料、特に数万のカードをどのように活用するかという点で、佐良木さんとよく話し合いをした。現在のところは、私のブログの「資料紹介」の項目に「春田コーパス」として紹介してある。また、佐良木さんは、ホームページ「NPO 言語研究アソシエーション」にて、「公開言語資源」の一部として紹介している。

まだ、まだ春田先生の研究の一部しか紹介できていないので、ホームページやブログに上げながら、資料を整理整頓していく予定である。私が定年退職したら、かなり時間ができるので、先生のカードをスキャーに読み込んで、それをデジタル化したらどうかとも考えている。コーパスのデジタル化の時代にあって、春田先生のような手書きでコツコツと溜め込んできたデータは大変貴重なので、これをなんとか活かせるようにしたいと佐良木さんと私は努力している。

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