介護の場での聞き書き

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2014-07-27

研究仲間の先生から興味深い新聞記事があると教えてもらったので、その記事の紹介をしてみたい。朝日のデジタル版(2014-07-24)に「(インタビュー)民俗学からみる介護:介護施設で「聞き書き」する職員・六車由実さん」という記事が掲載された。数年前まで、大学の教員として働いていたが、現在は介護の仕事についている女性である。もともとは民俗学を専門としており、介護の場でお年寄りと話をして、その話しの内容に深い関心を持ち、それを記録しているようだ。

私も母の介護をしており、週に何回か病院に行き、母の状態を見ている。数年前までは昔話をよくしてくれて、村の祭りで太鼓の音が聞こえると気持ちが弾んだとか、女学校の時の通学が汽車に酔ってつらかった、などの話をしてくれた。現在は認知症もかなり進み、私が話しかけても「あー」とか「うー」」とかの返事しかかえってこない。しかし、ある程度母と意思の疎通が可能だった頃には、聞いた話の断片をノートに記したりしていた。(もっとも、その断片をどうするかということは特に考えていなかった。)

六車さんの、要介護の高い人・認知症の人からも、「根気強く言葉をつないでいけば、その人なりの文脈が見えてきます。その土地の忘れられた歴史が浮かび上がり、不可解だった行動が理解できることもある」との言葉はとても参考になった。そして六車さんは自分の方法を「介護民俗学」と名付けている。

母に粘り強く声掛けをすることで、母の脳の活性化につながるかもしれない。今日の朝、病院を訪ねたときに、六車さんの記事を思い出しながら、母に声掛けをした。「今は夏で暑い」とか「部屋の中は涼しい」などの会話を何とか交わすことができた。そんな簡単なことでも Evernoteに書き込んで記憶しておこうと思う。病院を見舞う毎に簡単な記録や母の言葉は是非とも残したいと思うようになった。六車さんの記事はそんな意味でとても刺激的であった。

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