旅万雑(たびまんぞう)

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2015-08-16

先週は石川県に里帰りをしていた。金沢郊外の自宅と能登半島の実家である。両方の家とも窓を開けて掃除をしたりゴミ捨てをしたりした。両親の墓参りの後に、母方の叔父の家に挨拶に寄る。叔父は次のように言う。方言なのでそのまま書く。

おまえや、この前、町内会長の⚪️⚪️さんが、おまえに「たびまんぞう」をはろうてくれというてだぞ。たびのもん(旅の者)も、町内にいろいろ迷惑をかけるさかい、「たびまんぞう」はらわにゃならん。3,000円やそうや。

要は、町内会費3,000円を払えとのことである。今まで免除されていたが、町内会長が代わってから、旅の者(長期不在の者)にも徴収することになったようだ。私は、今、京都と金沢郊外の自宅の2カ所で払っているので、さらに増やして、3カ所の町内会費を払うのは気が進まない旨の話をした。すると叔父は了解したというような顔をした。叔父は町内会長さんと話をしてくれるようだ。

ところで、今日の話の中心は「旅万雑」という言葉である。長い間「たびまんぞう」と郷里の人が言うのを聞いてきて意味はわかるが、さて漢字はどうなるのか知らなかった。ネットで調べると、「万雑」という言葉があって、意味は「荘園・公領で賦課された年貢以外のさまざまな夫役や雑税の総称」(goo辞書)のようだ。

旅に出ている者は、住居の周りや神社・共同墓地の草刈りなどの共同作業を行うことができないので、その費用を負担しろということのようだ。昔は神社の草刈りなどは村が総出で作業して、そのあと、お酒を飲んで一種の社交の場であった。しかし、今は年寄りだらけで、人も減ったので、専門業者にお願いすることが増えたのではないか。(「旅」という言葉は、せいぜい2,3週間旅行に出るという意味だが、石川県のこの地方では、故郷を数十年離れていても「旅」という言葉を使う)

共同体の作業は昔は実際の労力の提供であったが、最近は金銭的な負担だけのところが増えてきたように思う。これは世界的な傾向で、英語圏でも association dues を支払って、それでお仕舞いというところが増えてきたようだ。

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