2015-08-23
本日は、第10回英語総合学会が関西学院大学の大阪梅田キャンパスで開かれた。所用があったので、発表を全部は聞くことはできなかったのだが、それぞれに興味深い内容だったので、ここで簡単に紹介する。
最初は成田一先生(大阪大学名誉教授)による「文法と発音の脳内処理と自動化のメカニズム」という発表であった。コミュニケーション重視の英語教育と近年唄われているが、きちんと文法事項を理解していないと真のコミュニケーション能力は身につかないとの趣旨であった。要は学習者は「構造解析力」を身につけることが肝要で、和訳はその副産物である、和訳が一方的に悪者扱いされているのはおかしな話である、とテンポよく色々と話が進んでいった。
そして、英語をネイティブ並みの能力にするのは理想だが、現実的な目標としては、半自動的に処理できるようになることであると、脳科学の研究成果を援用しながら説明していた。小学校からの英語教育の開始で、半自動的な英語処理へと近づくことができそうだ。
つぎは、「学習者の言語処理の自動化-英語総合力を伸ばす新しいシャドーイング指導-」という発表タイトルで、山内豊先生(東京国際大学)によるものだった。私自身はシャードイングを授業で利用したのことがないので、シャードイングには色々な可能性があることを教えてもらった。
面白いと思うのは、(1)自動評定スコアシステムがあって、学習者の音声をコンピュータに判断させても、手動で評定したスコアとかなり相関関係にあることだ。(2)またそのスコアとTOEICのスコアとも相関するそうである。
つまり、シャードイングをした学習者の音声をコンピュータで判定して、TOEICでどのレベルかある程度まで判断できるようだ。会場から二人のボランティアを募って実験をして、TOEICレベルの判定を下していた。(自ら進んでボランティアになってくれた二人の方に拍手)
つぎは「日本人が苦手な音調とリズムの教え方」で森庸子先生(同志社大学)によるものだった。英文を教えるときは「核」をきちんと教えるべきとの内容であった。英文を調べるソフトがあってそれはPraat (http://www.fon.hum.uva.nl/praat/)というサイトからダウンロードできる。
そのソフトを使いながら、核の部分を日本人はどのように発音しているか示してくれた。アメリカ人と日本人の発音の違いを可視化して学習者に教えるとたしかに効果的なようだ。
それぞれ3名の発表者とも刺激に満ちた内容であった。そのあとも発表が続いたが、自分は所用があり、早めに引き上げざるを得なかったのだが、できれば、それらの発表も聴きたかった。