柴田先生「言問い亭」を振り返る。

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2016-02-09

柴田勝征先生(元・福岡大学教授)は「言問い亭」というサイト(ホームページ、残念ながら、このサイトhttp://www1.rsp.fukuoka-u.ac.jp/kototoi/index.html は現在では消えている)を1997年1月から始めている。これは非常に有益なサイトである。言語を軸として数学、翻訳、技術、教育などに関して優れた知見に満ちた記事を20年近く発信してきた。先生が定年退職後にこれらの知見を書籍という形にして、世に発表を始めたばかりの時に他界されたが、これは日本の学問界において非常に惜しまれることであった。

先生は、言問い亭というサイトに、だいたい週一回ほどのペースで記事をアップされて、同時にメーリングリストで知人友人たちにその内容を知らせるのであった。今で言うTwitter のような形式でも発信されていた。そのメーリングリストを読んだ仲間たちからフィードバックがあり、それを基にして考察を深められ、学的な深化が常に行われていた。

サイトの内容をまとめる形でまず3冊ほどの本を生前出版された。花伝社から発刊された『言語vs認知の脳内抗争史 西洋脳と東洋脳をめぐる新たな知の冒険』、『フィンランド教育の批判的検討―学力の国際比較に異議あり!』、『算数教育と世界歴史言語学』である。これらは柴田先生の研究分野がいかに広く深いものであったのか示すものであった。

柴田先生に感心するのは、一般的な定説をあまり信用しないで、すべて自分の頭で考えてみようとする学問的態度である。たとえば、フィンランド教育などはしばしば賞賛の対象になっている。多くの研究者がフィンランドに行き、授業参観などに参加する。帰ってきて論文や書籍などでフィンランド教育を絶賛している。「フィンランドの教育=素晴らしい」という公式は定説化していて、その定説に異議をとなえることには多くの研究者は腰が引けてしまうだろう。

この点、柴田先生は堂々と批判をしている。自分の目で実際に見て、実際に考えたことだけを述べている。決して誰か権威者の言葉を受け売りすることはしない。この点は立派である。それゆえに、柴田先生の言葉は、しばしば「王様は裸だ!」と見抜いてしまう鋭さがある。


さて、期末試験の採点も終わったので、ちょっと余裕が出てきた。これから柴田先生の三冊を再読してみたいとも考えている。

それから、自分がこのブログ「言語21世紀塾」を開設するに当たって、柴田先生の「言問い亭」は参考になった点も付け加えておきたい。柴田先生のような内容のある重厚な学的問いかけはできなかったが、自分自身のストレス解消、学生とのコミュニケーションには役立った。しかし、今後の自分のブログの方向性を考える時期に来ているようにも思える。自分のブログこれからどのような方向を目指すべきか。

photo credit: Walking to the End via photopin (license)
photo credit: Walking to the End via photopin (license)
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