2014-10-20
土日曜と石川県の自宅に行った。日曜日はドライブしながら京都へ戻る。北陸自動車道と名神高速道を使うわけだが、運転の緊張感が異なる。北陸道は車も少なくて、のんびりとドライブができるが、米原から名神高速に入ると車の数が増えてとたんに緊張感が高まる。渋滞が時々あるのも名神高速の特徴である。京都に近づくと高い防音壁のため外界が見えなくなって閉鎖感が高まる。(大阪市内の高速を走るとこの感じが極端になる、ドライブが怖くなる)ドライブに集中するので外をみて楽しむことができなくなる。
さて、ドライブしながら、例によっていろいろと観察して、さらに愚考する。4時間あまりのドライブだが、ほとんどは山の中の高速道を走ることになる。日本は緑の国であるとつくづく感じる。「青い山脈」という歌があるが、まさしく青い山脈の中を走る感じである。この「青い」と「緑色の」の区別が難しい。日本語では伝統的には「青」が現在の「緑」「青」「藍」を含む語であり、意味する範囲が広かった。その伝統が現在でも続いており、本当は緑色のものでも青という表現を用いる。青信号、青野菜などの言い方にその名残が残っている。
種田山頭火の句「分け入っても分け入っても青い山」を思い出す。どう見ても、山の色は緑だが、伝統文化に親しんでいた詩人達は「青い山」「青い山脈」と歌ったようだ。私が歌を作るとしたら、「緑の色濃い山々」という表現しかつくれない。「青い」という表現は思いつかないな。
次の話題だが、この季節は、セイタカアワダチソウとススキをよく見かける。自分はセイタカアワダチソウは嫌いである。むかし、 外国人の女性がセイタカアワダチソウを素材に使って生け花を作ったと話すのを聞いて、自分とかなり感覚が違うと感じたことがあった。ネットで調べてもススキは好きと言う人が多いが、セイタカアワダチソウを好きと言う人は少なかった。40年ぐらい前からこの草が増えてきたようだ。ススキとの領土争いは有名で、近年はススキもある程度は勢いを取り戻しているようだ。
松がところどころ枯れているのが見える。松食い虫による被害と思われる。色が茶色に変化している。これは紅葉の色とも異なっている。石川県の海岸沿いは防風林としてたくさんの松があり、その結果たくさんの松食い虫も蔓延する。同じ種類の木ばかり植えると何か病気や虫が広がりやすいのだと思う。その意味では、様々な木が育っている雑木林が一番最強だと思う。
高速道で見る山で、多い木は杉や檜のようだ。ほとんどの山は人の管理で同一種の木ばかりが目立つ。北陸のあたりは昔は照葉樹林で覆われていたのだが、人間は利用しやすい針葉樹に置き換えていった。しかし、若い人で林業に関心を持つ人が少なくなり、山を自然に任せるようになると、これらの針葉樹の山々は次第に本来の照葉樹林へと戻っていくと思われる。するとバラ、クスノキ、サザンカ、ツバキのように葉が厚くて色の濃い木が増えるだろう。すると、山の色は現在の針葉樹の緑色から藍色に近い緑色になるのではないか。
200年後にこの北陸道をドライブする人はどのように山を見ていくだろうか。多くの木は照葉樹林に置き換わっていて、葉の色が濃くなる。そのために、その頃の詩人達は「藍色の山脈」と歌うかもしれない。