2016-05-08
学術誌 Language and Linguistics in Oceania (The Japanese Association of Linguistics in Oceania) に自分の論文が発表された。この雑誌はオセアニアの言語や言語学に関する論文を発表している学術雑誌であり、今年の5月にvol.8 が刊行された。
自分の論文は “A study of literacy in pre-hispanic Philippines” というタイトルである。ページ数は14ページ(pp.22-35)である。内容は、スペイン人が到来するフィリピンでは識字率が非常に高かったという説があるので、それが本当かどうか考察したものである。
フィリピンはスペインによって350年ほど植民地支配を受けた。独立の英雄ホセリサールを初めとして次のように唱える人々がいる。「植民地支配が行われる以前のフィリピンは民度も高く、人々は高い文化文明を享受して、識字率が高かった。が、スペイン人の支配により、楽園のようなフィリピン社会が無知と貧困の社会へと変えられてしまった。これは残念なことである。それゆえに、スペイン人を追い出して、以前の楽園のような社会に復帰しよう」という考えである。
どの民族にとっても、歴史を探れば栄光の時代があったのである。「その時代に戻る」というスローガンを掲げることで、改革を推し進める原動力になることがある。日本も王政復古と唱えることで明治維新が可能になったのである。アメリカも何かあれば、開拓者精神 (frontier spirits)を唱える。
フィリピン史においては、スペイン以前の楽園に戻ることはできなかった。すぐにアメリカの支配下に入り、人々はアメリカの文化に魅了されてしまった。ホセリサールの願った真の独立には程遠い結果となったのである。また、ホセリサールが信じた文字が普及した高度の文化文明のフィリピン社会は神話に過ぎず実体とは異なるようであった。
そんなことを論文としてまとめたのである。なお、この学術誌の発行と編集長は帝塚山学院大学の岡村徹教授であるので、岡村先生にコンタトを取られると、この学術誌の入手が可能になると思う。