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近くのビデオショップでDVD『聲の形』のアニメを借りてきた。非常に面白くて感動した。
切っ掛けは、ある授業で学生が大垣市を紹介するときに、有名な『聲の形』の舞台が大垣市であることを発表したことだ。その学生から、アニメの中で登場するケーキ屋は実在するのであり、美味しいケーキを売っている店として有名であることも教えてもらった。ビデオショップで、このタイトルを見つけたときに、そんなことを思い出して、借りてみようという気になったのだ。
大垣市は実際にたくさんの水路があって、水の豊かな都市として知られている。映画の中でも水のイメージがたくさん出てきて、なるほど大垣市らしいと感じた。
主人公は石田将也という少年であり、相手は西宮硝子という聴覚障害の少女であり、この二人の関係を巡ってストーリーは展開する。
小学校のクラスに西宮硝子という転校生がやってくる。石田翔也はその子をいじめてしまう。ところが、その子をいじめたことで逆に自分がいじめにあってしまう。
高校生になってから、ふとしたことで、二人は再会するのだが、小学生の頃の過去を引きづりながら、周囲を巻き込みつつ、次第にわかり合ってゆくようになる。
聴覚障害、いじめ、と難しいテーマをこのアニメに盛り込んだが、上手く成功したと言えるだろう。
「聲の形」と、題名を「聲」の字にしたのは、作者が、この字は「声と手と耳」が組み合わさってできているという説があることを知り、「気持ちを伝える方法は声だけじゃない」という意味を込めて「聲」という旧字にしたようだ。
このアニメを論じている、いろいろな解説を読むと、このアニメは聴覚障害を特に取り上げたわけではなくて、人間同士のコミュニケーション障害に焦点を合わせたかったようだ。コミュニケーション障害を乗り越えるために、人は声、手、耳を活用していくのだ。
女主人公の西宮硝子は、筆談、スマホ、手話とコミュニケーションを図ろうとする。周りもそんな彼女の求めに応じて、手話を学ぶ人が増えてくる。この映画はアニメだが、手話の場面は指の動きをはっきりと描いており、指の動きでも意味が分かるようになっている。
さらには、彼女は声を出すことも始めている。主人公に「好き」という言葉を伝えるあたりはこのアニメの圧巻でもある。音声はぎこちないが、ある程度は伝わるように訓練の成果が出てきている。
ただ、このアニメで主人公の石田将也と女主人公の西宮硝子の二人とも自殺を図ろうとする点は、どうも自分には必然性はないように思える。他者とのコミュニケーションが取れないことは、それくらいの絶望を人に与えるという点は理解できるが、このアニメでは二人はそこまで追い込まれているようには思えないのだが。
追記(2017-08-06)
最近、『君の名は』を見る機会があった。この映画の魅力の一つは舞台となっている飛騨市の美しい自然と落ち着いた町並みが描かれていることである。東京という大都市と飛騨という地方の小都市を対照させることで、飛騨市の落ち着いた優雅さが目立った。とにかく、風景がアニメ化されると、東京も飛騨も幻想的な雰囲気が出て、別の魅力が出てくる。
ところで、『聲の形』は、各場面に大垣市内の風景が盛り込まれている。作者がたまたま大垣市出身ということで、この場所を選んだようだ。大垣は水の都というイメージがあるそうだが、現在は、運河なども埋め立てられて、さほど水が多い町というイメージはない。ただ、このアニメでは、橋や川が頻繁にでてきて、水の豊かな大垣市を印象づけている。
この二つの映画ともヒットしたので、舞台となった飛騨市、大垣市とも観光地としてのイメージアップにつなげようとしている。飛騨市では、ウエブサイトに映画の聖地巡りのmap まで掲載している。大垣市も似たようなことをしている。
中学や高校の修学旅行や遠足などで、これらの地域を訪問することは有効だと思う。話題になったアニメなどで、その聖地巡りをすることで、その地域の産業や自然、特徴などを知ることにつながる。身近な話題から入ってゆくことで、子どもたちの関心をより強く引きつけることができるだろう。
