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今年度の後期の大学院のテキストとして、Trudgill の Sociolinguistics を読んだ。この本は30年ぐらい前に読んだことがあり、役に立った本だという印象を受けたので、2017年度後期に、大学院のテキストとして、大学院生と一緒にゆっくりと読んだのである。
この本は最新の版は、2000年に発売された第4版である。ゆっくりと読んだので、すっきりと頭に入った気がする。最初に読んだときは、勢いで読んでしまったのだが、このように1ページ、1ページとゆっくりと読んでいく方法もありだなと思う。
この本は、副題が An introduction to language and society とあるように、入門書である。まず、英文が分かりやすくて内容も明快である。大学院や学部の専門課程のテキストとして最適である。学部生や院生も、ついてこれるレベルである。
イギリスの方言などについて細かく述べてある。こんなに細かくイギリスの方言の説明など不要と思えることもあったが、それなりに勉強になった。30年前に読んだときは、イギリスの方言の箇所など、読み飛ばしたせいか、ごちゃごちゃして分からなかったが、今回はすっきりと頭に入った。これも30年間でこちらの知識量が増えたので理解度が高まったからでもある。
世界の様々な言語、特にアフリカの言語などについても、Trudgill は深い知識を持っていた。院生たちも、これをきっかけにアフリカの諸語に関心をもってくれたようだ。
言語に対する偏見を解きほぐすには最適の本だと思う。言語に関して、人々の抱く偏見、たとえば「ある言語はある言語よりも美しいとか、明快だ」という考えがどのように生まれて、何故今も人々の心に巣くっているかなど説明がある。言語と性、差別語、方言と標準語の価値など、現代の問題がすでに語られている。
この本の翻訳として、岩波書店の『言語と社会』があるが、文字が小さいので読みづらいし、古い版を訳しているので、内容が最新版でない点が問題だ。でも、こんな本を訳すとなると、訳者には大変な勉強になるだろうと思う。