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今日は卒業論文に関する発表会があった。その中でルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』に関する発表があったので、その報告と感想を述べておきたい。
1865年に Alice’s Adventures in Wonderland が刊行された。そして、その翌年にドイツ語版とフランス語版が出版されたそうである。この作品は作中に織り込まれた言葉遊びが特徴的である。英語の音韻や語法、文字通りの意味とイディオムの意味の交錯、メタファー、メタニミー、シネクドキ(提喩)などで溢れていたので、翻訳不可能のように思われたのだ。だが、不可能のように思えるが故に、翻訳に挑戦する人が絶えなかった。日本語の翻訳も試みる人がたくさんいて、アマゾンを見るとたくさんの人が翻訳を試みていたことが分かる。
日本語でも人気の作品であるが、これは言葉遊びが受けたというよりも、作品の内容、奇抜さが受けたと考えるだろう。言葉遊びの部分に関しては翻訳不可能である。この部分の味わいは英語にきわめて堪能な人が、英語で読むことで鑑賞することができるであろう。
発表者に私は「この物語は日本語に翻訳可能でしょうか?」と質問を投げかけたのだが、答えは「言葉遊びの部分は翻訳不可能だが、内容や映像部分がそれだけで素晴らしいので、その部分を翻訳すればいい」であった。まあ、そうゆうことになるのだな。私も同意見だ。
この本の起こりは、ルイス・キャロルが子どもたちと船遊びをしていたときに、面白い話をねだられて、即興でお話を語ったそうだ。それが後の『不思議の国のアリス』に発展してゆくのだ。このことからも、この物語は音声から、音で楽しむ物語だと思われる。いや、お伽噺や子ども向けの話しはすべて「語られる」ことでその魅力が発揮できる。
テレビで「日本昔話」という番組を聴いていたが、ゆったりした語り手の口調に自然と引き込まれる。これが文字で書籍を通しての鑑賞ならば、あまり面白さを感じなかったと思う。
Alice’s Adventures in Wonderland は音声で語られ味わられるるのが一番本来的なあり方であろう。ただ、この物語は文字で読んでもかもし出す映像的なイメージも素晴らしい。それゆえに、映画やアニメもたくさん作られてきている。
最近は、ジョニー・デップ主演の映画で見たが、あまりに派手すぎで、これはアリスの物語とは無関係の新しい創作であると考えた方がいいだろう。
Alice’s Adventures in Wonderland を英語学習に使うべきとの意見がある。可能だと思うが、高校生以上に使うべきだろう。ただ、純粋に音だけを楽しむのならば、小学生でも可能かもしれない。
学生の発表を聞いて、説明と感想を書いてみた。書いているうちに、どれが学生の説明か自分のコメントか区別がつかなくなった。その点、ご海容を。