『都政新報』に執筆する。


2022年2月15日号の『都政新報』という新聞に私の原稿が記載された。「文化・エッセー・主張」欄の「主張」というコーナーに、「外国人住民を日本社会にどのように迎えるか」という私の小論が掲載された。

内容は、外国人住民が増えている中で、日本人側としてはどのような考えで、どのような行動で、迎入れるかを述べたものである。2000字ほどの小論であるので、ブログでも簡単に読めるくらいだが、著作権は都政新報社にあるので、転載は差し控える。

コロナでしばらくは、外国人観光客や移住する外国人の数は減っていたようだ。しかし、そろそろコロナ後が見えてきたようにも感じる。来年の今頃は観光客や移住を望む外国人の数は増えるだろうと思われる。そのために、どのような心構えが必要かしっかりと考えてみる時期が来たのではないか。

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岐阜県内の外国人の数


現在、私は岐阜県に住んでいる。岐阜は北の飛騨と南の美濃の二つの地域に分けられる。南の美濃地方ではかなりの数の外国人の姿が見られるようだ。日常的に外国人を見かけるので、もはや珍しいという印象はなくて、私たちの日常生活の中に溶け込んでいる。

岐阜県のホームページによれば、県内在留外国人数は59,741名である(2020年6月末現在)。なお、県の総人口は196万人 (正確には、2021年7月時点で、1,965,427人である。在留外国人の数は、約3,0%である。

その数の多い順に見ていくが、百の位は四捨五入してみると、多い順から、フィリピン1万3千人、ブラジル1万2千人、中国1万2千人、ベトナム1万人、韓国4千人、インドネシア1千人、ネパール1千人である。さらに、タイ、米国、台湾と続くのである。フィリピン、ブラジル、中国、ベトナムがとりわけ多いように感じる。

私の住んでいる地域は岐阜駅からバスで1時間ほどの距離にある。所々工場が並んでいる。外国人の若者はそこで技能実習生として働いているのだろうか。数人の若い外国人のひとたちが自転車に乗っている姿を見かける。スーパーでは、ダンボールに買い物を積み込んでいる。この姿はコロナ以前から見かけるので、コロナにより数が減ったという印象は受けない。

外国人を定住している定住外国人と短期滞在の外国人観光客に分けると、このコロナの影響で外国人観光客の数は激減した。しかし、定住外国人の数はさほど変更はないようだ。むしろコロナのために帰国できないことで困っている人も多いだろう。

コロナが日本に住む外国人住民の生活にどのような影響を与えたのか、与えつつあるのか、しばらく調べてみたいと考えている。

ジム・カミンズ/マルセル・ダネシ『カナダの継承語教育』を紹介する。


高垣俊之先生(尾道市立大学、教授)から訳書『カナダの継承語教育』(明石書店)の新装版をご恵贈いただいた。ここに感謝の念を示すと同時に、この本の内容を紹介したい。

この本は、原題は Heritage Languages : The Development and Denial of Canada’s Linguistic Resources であり、執筆はJim Cummins とMarcel Dansei の両教授である。日本語に訳されたのは、中島和子先生(トロント大学、名誉教授)と高垣俊之先生である。この本は2005年に初版が出ており、今回はその新装版である。

この本はカナダの継承語教育の歴史を述べている。タイトルにあるように当初の継承語教育は Development であったが、近年はその後退の傾向が見られるので、Denial という表現を用いたようだ。カナダはマイノリティの言語教育の先進国と思われていたのだが、その国でさえもマイノリティへの言語教育への理解は順調ではない。そのような現状を認識できて私には有益な本であった。

以下、自分が気づいた点を箇条書きにしてゆく。

p.14  継承語(Heritage Language)という表現は、先住民とイヌイットの言語ならびに英仏両語は含まないという点である。私の認識は、先住民の言語も含まれていると思っていたので、この点は意外であった。

p.158 Heritage Language に対して、「継承語」という訳語を当てられたのは、中島和子先生が初めてとのことである。「遺産言語」という訳語も見かけられるが、「遺産」という表現はどうしても過去を引きずるが、子供の人間形成に深くかかわる生きた言語という意味で「継承語」という訳語を採用されたとのこと。なるほどと納得した次第である。

p.72 モノリンガリズムのコストという概念は面白い。ふつうは、バイリンガリズムは一つの言語をプラスして覚えるのであるからコストがかかるというのが一般常識であった。しかし、他国の言語文化を理解できる人がカナダにいることで、計り知れぬ外交的・経済的なメリットが生まれるとのことだ。安全保障の視点からも、コストがかからないのである。

p.77 ここでは、継承語も並行して学習した児童の方が、継承語の学習を減らしていった児童よりも、成績が良いという報告がいくつかある。

p.87  1920年から1960年にかけて、バイリンガリズムこそが子どもの言語上のハンディや認知面の混乱をきたす要因と学者たちが考えていたとのこと。これはその当時の時代背景が見えてくる。マイノリティの言語文化は無駄であり、早く主流の言語文化に染まることが教育の狙いであった。

p.88 に付加的バイリンガリズム(additive bilingualism)との訳語が提示されている。p.108の訳注では、加算的バイリンガリズム(additive bilingualism) との訳語である。この場合は、訳語は統一した方がいいのではと思う。

p.89  言語を二つ学んでおくと、第3番目の言語を学ぶときに役に立つとの指摘は、私の経験からもなるほどと思う。

p.99 第5章は、カナダにおける「ろう」児への言語教育について述べられている。私自身はこの分野は知識がなかったので、非常に興味深く感じた。


以上、私の感想である。カナダは「多文化・多言語主義」ではなくて、言語は英仏だけの2言語に絞った、「多文化・2言語主義」の国であると思っていたが、意外に多言語への動きがあった点が興味深かった。その動きが現代ではやや後退している点は残念である。

なお、この本は白色のハードカバーの本である。ハードカバーにしては、2,400円と手ごろな値段である。

 

登録外国人統計と在留外国人統計

在留外国人統計による数

在留外国人統計が法務省より発表されている。2017年6月末時点で、2,471,458人である。アジアからが、205万人であり、その中でも、中国が711,486人 韓国が452,953人 フィリピンが251,934人 ベトナムが232,562人である。その他には、ブラジルから185,967人が目立つ。(なお、台湾と朝鮮は別個に統計が取られている)

近年、増加が著しいのは、ベトナムとネパールであり、韓国籍は減少傾向にある。在留外国人数が最も多いのは,東京都の521,088人であり,全国の21.1%を占め、以下、愛知県、大阪府、神奈川県、埼玉県と続いている。 

在留外国人の定義

在留外国人等は何かということだが、その定義は法務省によれば、次のようになっている。要は、3か月以上在留する人を在留外国人と定義している。以下のように、中長期在留者、在留外国人、総在留外国人のように細分類されている。在留外国人統計は総在留外国人の数である。

中長期在留者

出入国管理及び難民認定法上の在留資格をもって我が国に在留する外国人のうち,次の①から④までのいずれにもあてはまらない者である。なお,次の⑤及び⑥の者も中長期在留者ではない。
   ① 「3月」以下の在留期間が決定された者
   ② 「短期滞在」の在留資格が決定された者
   ③ 「外交」又は「公用」の在留資格が決定された者
   ④ ①から③までに準じるものとして法務省令で定める者(「特定活動」の在留資格が決定された,台湾日本関係協会の本邦の事務所若しくは駐日パレスチナ総代表部の職員又はその家族)
   ⑤ 特別永住者
   ⑥ 在留資格を有しない者

在留外国人

中長期在留者及び特別永住者

総在留外国人

 在留外国人に次の者を加えたもの。
 出入国管理及び難民認定法上の在留資格をもって我が国に在留する外国人のうち,次の①から④のいずれかにあ
てはまる者
   ① 「3月」以下の在留期間が決定された者
   ② 「短期滞在」の在留資格が決定された者
   ③ 「外交」又は「公用」の在留資格が決定された者
   ④ ①から③までに準じるものとして法務省令で定める者(「特定活動」の在留資格が決定された,台湾日本関係
    協会の本邦の事務所若しくは駐日パレスチナ総代表部の職員又はその家族)

在留外国人と登録外国人の違い

2012年以前は、外国人の動向に関しては、入国管理局による出入国の際の情報把握と市区町村による外国人登録制度の二つを利用していた。しかし、他の市町村への異動の際に統計の漏れがめだつようになった。そのために入管法に基づくものに一本化して、外国人の動向を把握するようになった。この新しい在留管理制度の導入に伴って外国人登録制度は廃止された。

同時に、従来の外国人登録証明書は、あらたに在留カードになり、新しい在留管理制度の導入に併せて、住民基本台帳制度の対象に外国人住民が加えられるようになった。さらには、出国の日から1年以内に再入国する場合の再入国許可手続を原則として不要とする、みなし再入国許可制度が導入された。

二つの統計の違い

本質的には、二つの統計で示される外国人の数は変わらないが、新統計の方が、外国人が住所変更にした場合でも的確に人数を把握できるという違いがある。

 

「やさいをとらないで」という標識

先日、畑道を散歩していたら次のような標識があった。「やさいをとらなで」そしてその下には中国語で何やら書いてある。おそらく、「中国語で野菜をとるな」と書いてあるのだろう。

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この標識を見て自分はいろいろなことを考えた。

(1)この農家は少なくとも一回は野菜泥棒にあったようだ。

(2)農家の人は野菜を盗んだのが中国人であるという確証を持っている。

(3)中国語でも簡体字で書いてあるので、大陸の中国人である。

(4)農家の人は業を煮やして、中国語のわかる人に翻訳を頼んで、こんな掲示を自分の野菜畑に立てた。

(5)網を畑の周りに張って容易に外部からは人が入れないようにしている。

しかし、問題点もあるように考える。それは以下のようなことである。

(6)道行く人に中国人の野菜泥棒がいるという警告であり、そのために読んだ人は中国人に対する偏見を生み出す可能性がある。

(7)無関係な中国人がこの掲示をみたら、自民族に対する侮辱であると憤慨するだろう。

(8)多民族共生社会を目指すべきと考えた人はこのような掲示を見て、そんな社会はやはり無理かなと考えてしまう。


あれこれ考えたが、しかし、やはり多民族多文化多言語共生社会を受け入れていくしかないだろうと思う。これはすべきだ、するべきでない、という二者選択の問題ではない。いずれにせよ、国境の障壁がこれまで低くなっているならば、次から次と人々はやってくる。

そして、日本人も次から次と他国へと移住してゆく。問題は、どのようにしたら、上手に共生社会を作り出すかという点だ。ヨーロッパでは難民問題で苦しんでいる。アメリカの新大統領は移民排斥を訴えている。世界は共生社会のもたらす負の面にばかり注目しているようだ。

とにかく、いろいろなことが起きるだろうが、多民族多文化多言語共生社会は避けられない。選択することが可能なのは、そのスピードを速めるか遅めるか、という点だけだ。

先般、自分が講演をした時には、コメントした人の中に、「外国人を受け入れて理想社会ができる、両手を広げて歓迎するという風潮には疑問だ」と述べた人がいた。たしかに、そうだ。でも、現実が動いているのだから、それをどのように上手に受け入れるか工夫すべきことだと思う。

美濃加茂市を再度訪問する。

美濃加茂市を8月12日に訪れて多文化共生係の方から国際交流のあり方について貴重なお話をうかがった。それは過去の記事に投稿してある。

実は、さらに知りたいことがあり、11月1日に同僚の先生と市役所を再度訪問して、今度は外国籍の子供たちの教育についてお話をうかがった。そして、初期指導教室である「のぞみ教室」を見学させていただいた。忙しい中、対応していただいた学校教育課の課長さん、教育長さん、のぞみ教室の担当の先生方、これらの方々へまず御礼を述べたいと思う。

教えていただいたことは以下のことである。8月12日の話を重なる部分もあるが、重要な点なので再度記述したい。

美濃加茂市は外国人集住都市会議に参加している。そして、2008年には「みのかも宣言」を出している。そして、多文化共生社会のあり方について、地方都市の進むべき方向を宣言したものである。

美濃加茂市はソニーの工場があった関係で、日系ブラジル人がたくさん働いていた。しかし、2013年3月に、ソニーEMCS「美濃加茂サイト」は閉鎖となった。そのために多くの従業員が職を失った。跡地は千趣会の物流倉庫となったのである。しかし、物流倉庫では、ソニーの時ほどの数の雇用は不可能で、必然的に多くの従業員が美濃加茂市を離れざるを得なかった。ただ、市役所側が予想していたよりは、多くの日系ブラジル人の方が市内に残ったそうである。

その理由として、美濃加茂市は日系ブラジル人のコミュニティーがあって、彼らには住みやすいインフラストラクチャーが成立していたことが大きな要因のようだ。美濃加茂市を拠点としてほかのところに働きに行くことができるそうだ。

学校での外国籍の子ども達への日本語教育は現在も行われている。通常の教員だけでは足りない分は加配の先生方、あるいは支援員の方々から助けてもらっている。

いろいろなお話をうかがった後で、車で10分ぐらいのところにある、「のぞみ教室」に案内してもらった。

古井(こび)小学校内に併設されて国際教室がある。正式の名称は「初期指導教室のぞみ教室」である。私たちが訪問したときは、十数名の子どもたちが学んでいた。それぞれの日本語に関する能力が異なるので、一斉授業という形ではなくて、それぞれが個別に分かれて先生方から指導を受ける。話しかけてみたら、日系ブラジル人とフィリピン人が多数を占めていた。

私たちが訪問していたときは、ちょうどフィリピン人のお母さんが子どもを連れて入室の説明を受けていた。これから数か月はこの教室に通い、慣れたところで、正規の学校に行くそうだ。平均して、3か月ぐらいこの教室で学ぶとのこと、そして、年齢に対応した学年に入るそうだ。つまり、10歳の子どもならば、小学4年生のクラスに入るのであり、たとえ日本語能力が不十分なので、小学2年生のクラスに行く、などということはないそうである。

子どもの中には、家庭の問題で学習に対する意欲を失っている子どもがいるそうだ。子どもの教育には、安定した家庭環境、それには安定した収入が必要だが、その点で労働環境のひずみが子どもに投影されることがある。その点で子どもたちへの支援を続ける先生方のご苦労があることと思われる。

最後にいろいろとお世話になった先生方へ再度お礼を述べておきたい。また、画像を示しておきたい。

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外国人学校を調べたい。

2016-09-08

このところ、ネットで外国人学校を色々と調べている。2006年に法人の認可をえたHIRO学園(ひろがくえん; ポルトガル語: Hiro Gakuen – Escola Brasileira Prof. Kawase)を調べている。岐阜県大垣市にあるブラジル人学校である。なお、岐阜県は大垣市と美濃加茂市、可児市の3つが外国人、とくに日系ブラジル人の比率が高い市として有名である。ところで、HIRO学園だが、ネットには次のように歴史が記してある。

沿革
2000年4月:私塾として開校。
2002年12月:ブラジルから認可校と認められる
2006年11月28日:各種学校、準学校法人として認可
2007年2月1日:各種学校として開校

である。この学園のホームページはあるのだが、心配なのは、記事のアップロードが2013年でストップしていることだ。各地のブラジル人学校はリーマンショック以降に、父母が職場を見つけづらくなり、多くがブラジルに戻ったことを聞いている。

下の表を見ると、2008年頃には30万人を越したのだが、以後は徐々に減っていき、いまでは17万ぐらいの数である。各地のブラジル人学校は経営難に苦しんでいると聞いていたが、このあたりはどうなっているのか、心配である。

国際理解教育とブラジル人児童の教育」という論文を見つけて読んでみた。2003年に書かれた論文であるが、非常に勉強になった。

いま自分がいる2013年、そして高齢化社会に向かいつつある(すでにその最中になるとも言えるが)日本、いま住んでいる岐阜県、これを元に自分に何ができるか考えてみたい。

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