国際人権規約とは、世界人権宣言の内容を基礎として、1966年に条約化したものである。これは人権諸条約の中で最も基本的かつ包括的なものとされている。日本は1979年に批准をしている。国際人権規約は国際人権A規約(社会権規約)と国際人権B規約(自由権規約)に分かれている。
これは世界人権宣言の理想とする自由な人間を保障するために規約化がすすめられたのである。その経緯は以下のとおりである。外務省の「国際人権規約の作成及び採択の経緯」の一部を抜粋した。
1950年の第5回国連総会においては、世界人権宣言が理想とする「自由な人間」であるためには市民的及び政治的権利が保障されるだけでなく、欠乏からの自由、つまり経済的、社会的及び文化的権利の確保が必要であるとの観点から、規約草案にこれらのいわゆる社会権と男女平等の規定を含めることが決定されました。
その後、1951年の第6回国連総会においては、規約草案の作成に当たり、市民的及び政治的権利に関する規約と経済的、社会的及び文化的権利に関する規約とに分けて2つの国際人権規約を作成することが決定されました。
1954年、国連人権委員会は、それぞれ実施措置を盛り込んだ2つの国際人権規約の草案、すなわち、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(以下「A規約」と略称)及び「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(以下「B規約」と略称)の草案を作成しました。
「国際人権A規約」は「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」で、労働の権利、社会保障についての権利、教育についての権利などの社会権を保障している。これは世界人権宣言において規定されている「経済的・社会的・文化的権利」に相当する。
「国際人権B規約」は「市民的及び政治的権利に関する国際規約」である。B規約では、身体の自由と安全、移動の自由、思想・良心の自由、差別の禁止、法の下の平等などの自由権が保障され、これは世界人権宣言において想定されている「市民的・政治的権利」にほぼ相当する。B規約は、締結国に対して即時実施を義務づけている。B規約の第 27 条(少数者の権利)にて、マイノリティは「自己の言語を使用する権利を否定されない」とあって、言語を使う権利は人権の中に含まれると初めて公的に明言したのある。
なお、自由権規約B規約・第 27 条は、次のようになっている。「 種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国にお いて、当該少数民族に属する者は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。(日本政府訳)」
この「自己の言語を使用する権利を否定されない」と明確に規定されている部分に注目すべきである。日本政府は1979年に批准しているのであり、日本国内におけるマイノリティの言語に対する権利の否定を行ってはならないのである。