ティーム・ティーチングはなぜ必要か(学習指導要領を見る)
従来からの文法訳読法
従来行われてきたいわゆる「文法訳読式」の授業では、文法事項を覚え、英文の正確な解釈を行うことが重視されてきた。しかし、このような授業で得られた英語の知識は、ひとたび実践的な場面では、どうも役にたたないと批判されてきた。英会話などが学習されたとしても、おおくはパターンが決まった内容であった。教科書の会話文を覚えるだけ、の作業になりがちであった。
実際の会話の場面では、やりとりがとんどん発展して、それに臨機応変に対応していくが必要がある。これらは、いくらコミュニケーションを意識しても、日本人の教員が一人で生徒を相手にしても効果はあまり上がらなかった。枠をはめた中での「言語活動」では限界があった。そのような反省から、英語の授業をより実際に近い「言語行動」や「言語行為」にすることが求められて、英語によるコミュニティ一を教室内の中に作り出すために、ティーム・ティーチングが導入されたのである。
また、異文化理解がよく叫ばれるようになったが、異文化の担い手に直接教室に来てもらい、その本人から外国の文化のあり方を教えてもらうことで、国際理解・異文化理解への道を開くことができるのである。その意味で、教室内へのネイティブ・スピーカーを招き入れることは有効なことである。
学習指導要領
学習指導要領では、コミュニケーションを強調しているが、その具体策の切り札としてティーム・ティーチングがあるとも考えられる。
次期学習指導要領(2017年3月公示)では、小学校の5,6年生の教科「外国語」に関しては以下のような文言がある。
学級担任の教師又は外国語を担当する教師が指導計画を作成し,授業を実施するに当たっては,ネイティブ・スピーカーや英語が堪能な地域人材などの協力を得る等,指導体制の充実を図るとともに,指導方法の工夫を行うこと
なお、小学校の3,4年生に関しては、「外国語活動」として、同じ内容で記されている。
中学校の英語でも、以下のようになっている。
指導計画の作成や授業の実施に当たっては,ネイティブ・スピーカーや英語が堪能な地域人材などの協力を得る等,指導体制の充実を図るとともに,指導方法の工夫を行うこと。
学習指導要領に示されているように、文科省は積極的にネイティブ・スピーカーの活用を進めている。ネイティブ・スピーカーの活用に関しては、多くの関心が寄せられている。だが、英語が堪能な地域人材の活用については、まだ漠然としているようだ。
ティーム・ティーチングのありさま
ティーム・ティーチングは日本人教員と ALT と生徒の三者が共同でおこなう言語活動である。ALTが単独で授業をすることは望ましくない。必ず日本人教員が授業を主導して、ALTと生徒の調整を行う(指導要領では、「学級担任の教師又は外国語を担当する教師が指導計画を作成し」とある。そしてALTの役割は、生きた英語や異文化の様子を示して、生徒に生の英語に触れるという機会を与えることである。
ALT はベース・スクール(base school)に1年間を通して滞在する。そして、その学校内のさまざまなクラスを毎週指導する。ベース・スクールでのティーム・ティーチングでは、休み時間や放課後に生徒とALTが会話を交わしたり、ALTが部活動や学校行事に参加したりするので、生徒との交流の機会も多くなる。ALT はレギュラー訪問(regular visits)をも行う。ある一定の頻度で、ALTが他の学校やクラスを指導する。さらには、ワンショット訪問(one shot visit)を行う場合がある。そこでは、年に1回だけ、ある学校やクラスを訪問するのである。ワンショット訪問では、年間指導計画に組まれていないために、1回だけの「特別授業」あるいは場合によっては「お遊び」になってしまうことがある。そこでは、ALTとの数少ないふれあいの機会を最大限生かそうと、 ALTが主導する授業も多く見られる。
JETプログラムの招聘者の数は、2002年は6,273名であったが、2013年は4,372名であった。毎年減少している。このことは政府の予算との関係がある。ただし、JETプログラム以外で雇用される例が増えてきている。
英語教育法の授業における学生への課題として
(1)自分たちが見聞きしたALTの先生はどのような人がいたか、その人を紹介してみよう。
(2)自分たちの経験したティーム・ティーチングはどのような点で効果があったのか、挙げてみよう。
(3)日本人の先生とALTはどのような役割分担をしたらいいのか。
(4)「英語が堪能な地域人材などの協力」という文言が学習指導要領にあるが、どのようにして活用したらいいのか。