Deci と Ryan の自己決定理論

近年は、Deci (デシ)と Ryan(ライアン) による自己決定理論(Self-determination theory)が注目を浴びている。彼らの研究が外国語学習における動機づけ研究に大きな影響を与えている。Deci と Ryan は、人間には元来、自律性(autonomy)の欲求、有能性(competence)の欲求、関係性(relatedness)の欲求という3つの心理的欲求があると主張する。この3つの心理的欲求を充足する時に,最も自己決定的な行動(人は意欲的になりパーソナリティが統合的に発達する)が起こるとしている。

Deci と Ryan は動機の種類として外発的動機づけと内発的動機づけ(intrinsic motivation)を挙げた。内発的動機づけとは学習する内容への興味などから学習そのものを目的として自発的に学習する動機づけを指し、外発的動機づけ(extrinsic motivation)とは学習そのもの以外から押しつけられた目的のために学習する動機付けを指す。

人が活動に対して内発的に動機づけられるプロセスを上記の図のようにモデル化し,自己決定度の高いものから低いものまでを,「無動機,外発的動機,内発的動機」の連続体として段階的に示した。(資料:原田登美「日本語学習者と英語学習者の留学動機」)

自己決定度が低い    →      自己決定度が高い

◎無動機→「外的調整 → 取り入れ的調整 → 同一化調整 → 統合的調整」→内発的動機   (「外的調整から総合的動機」までは外発的動機)

◎「外的調整」とは、最も他律的な状態で、自己決定の度合いが低く、外部からやらされて行動をしている状態をしめす。
◎「取り入れ的調整」とは、課題の価値は認め,自己の価値観として取り入れつつあるものの、まだ「しなくてはいけないといった義務的な感覚を持っている状態」
◎「同一化調整」とは、行動の持つ価値の重要さが認識され、「重要だから」やるといった積極的な理由へと変わる段階
◎「統合的調整」とは、他の価値観と対立しない自己と融合した価値観を持つようになる段階であり、自らやりたくてそれを行うものである。