リスニング(スピーキングも含めて)の指導雑感

リスニングには(1)public speech を聴く場合と(2)相手があるconversation がある。厳密に言えば、さらに(3) group discussion がある。教員は、その日の授業はどれに集中するのか決めた方がよい。(1)ならば、CDを聴かせる。(2)ならば、ペアを組ませてトークさせる。(3)ならば、グループを組ませる。もちろん、(2)と(3)はスピーキングとも連動するので、総合性が高い。そして、実際の日常生活の場合にも、よくありうることだ。

(1)の要素だけでは学習者は飽きてしまうことがあるので、ネイティブどうしの(2)と(3)の音声をCDで聴くこともよい。私自身も、トークショウのように参加者が白熱して盛り上がる方が面白く聴ける。
リスニングと音声指導は別々に行った方がよい。public speech ならば、辞書通りの音声でゆっくりと話してくれる。(2)と(3)ならば、話し言葉の縮約形なども知っていた方が、はるかに分かりやすい。

ところで、ペアやグループを組ませて会話させると、日本語での雑談が始まることが多い。これをどのようにして統制したらいいのか、これが問題だ。学習者の自覚を待つしかないのか。

自然の速度で話されたCDがいいのか、それとも日本人学生向けのゆっくりとした速度のCDがいいのか。自然の速度で話された音声ならば、authentic という感じが出てきて、いい意味で、生徒や学生はより緊張するかもしれない。ただ、聴き取りづらいので速度を25%ほどゆるやかにするといい。これならば、不自然と感じることも少ない。私自身もNetflixを視聴しているときは、速度調整を行うことが多い。

CDを聴かせる場合と、映画やビデオYouTubeで音声を聴かせる場合がある。CDの方が音声への集中力は高いだろう。画像や映像があった方が、手がかりが多くなり、音声が分からなくても、画像に手がかりがあるので何となく意味が分かる場合がある。

分かりづらい語彙や言い回しは、事前にあるいは、初回聴かせた後に詳しい説明をした方がいいだろう。単に聴かせ放しでは語彙や成句は記憶に定着しない。強勢、リズム、イントネーションは別個に音声指導の時間をあてるべきである。

異なるスピーチスタイル、丁寧な言い方、カジュアルな言い方などの指導をすべきだ。しかし、最初はテキストスタイルのフォーマルな言い方だ。崩した言い方は、かなり慣れてからでいい。
映画やポップスの音声は、カジュアルな言い方が普通である。フォーマルな言い方を覚えてからカジュアルな言い方へ進むべきである。リスニングでも、同じだろう。ただ、母語習得の場合はカジュアル→フォーマルであるが、第二言語習得では、フォーマル→カジュアルの順番がいい。

学生にエッセイを書かせて、優秀なエッセイを書いた学生を教壇に立たせて、読み上げるのはよい方法だ。だが、これは書かれたエッセイをそのまま読み上げてもよくない。教員側がそのエッセイの手直しをするべきだ。また、その時に、事前に教員の前で読み上げてもらう。その時に、指導をすればいいのだが、そのような時間的な余裕は得られないかもしれない。
ただ、学生にエッセイを書かせるが、全員が皆の前で1分間スピーチというような課題を与えると真剣になる。そして、英文を練り上げてゆく。これは、有効な方法だ。ただ、手元に紙やiPadを持って読み上げるだけの学習者がいるので、これは注意する必要がある。