昔のライティングの指導

自分が高校生のころの作文の時間は和文英訳がほとんどだった。自由英作文の時間はなかった。英作文の時間は「英作・文法」という授業の一環で、教員は例文を提示して、その文法的な内容を説明して、その例文を暗記させる。次はその例文を応用して、提示する和文を英訳させるという授業だった。

しかし、そのような形の英作文の授業は好まれなくなってきた。名称も「英作文」ではなくて、「ライティング」という名称が使われることが増えてきた。それで、それに基づいて授業方法に変えてゆく必要性が出てきたのだ。なにしろ、学習指導要領にうるさいくらいに「コミュニケーション」というキーワードが出てくるのだから。この「コミュニケーション」を意識したライティングの指導をすることが必要となってくる。
自分は今、英語科教育法の授業を担当している。使っている教科書だが、この教科書には、いわば授業の理想形が示されている。「このような形で授業が行わればいいな」という教科書執筆者の願いが書いてあるのだ。しかし、現実の授業はそこまで到達することは難しい。

指導書の説明する方法

先日の授業では、英語科教育法の教科書に提示しているライティング指導の方法通りに、実際にやってみた(教科書は高校生を対象に書いてあるが、この授業では大学生に高校生になったつもりで授業を受けてもらった)。次の順番である。

(1) Q & A 形式のライティングの授業である。

まず高校生(本当は大学生)に、6問ほど英文の質問を作らせる。他の生徒がその質問に答えるとする。その答えを書いていくと、その答えの文章を、順番にならべると一応は意味のつながりのある文になっているようにする。そのような答えの文を誘導するような質問文を考えさせる。それを他の生徒(ここでは横に座っている学生)に渡して答えを書き上げてもらう。しばらくしたら、その答えを書いた紙を返してもらって自分でチェックする。果たして、自分の作問した質問の答えの文が、並べると意味をなしているか。つまり自分の発した質問の文が、意味ある文(答え)を書き上げることを誘導しているかのチェックである。

(2)パラグラフライティングの説明を行った。

トピックセンテンス(主題文)、サポーティングセンテンス(支持文)などの概念である。実際の文を見て、どれがトピックセンテンスであるか、見当つけさせたりした。しかし、これも本当はパラグラフライティングを意識して実際に書かせないと納得できないと思う。単にパラグラフライティングとは何か、の口頭説明では分からなかったと思う。しかし、現在の高校生のレベル(また多くの大学生のレベル)では、ライティングの時に、トピックセンテンスを意識したライティングは難しいように思える。

(3)次は、Free Writing である。

自由に何でも書いていい。質よりも量が大切だと言い聞かせて、白紙の紙を渡して、とにかくたくさん書けと指示を与えた。何でもテーマはいいということでは、テーマを決めるだけで時間がかなりそうだ。それで、私は、my future, my best friend, my family というようなテーマを与えた。文法的な間違いは構わない、という風に指示して、学生に何でもいいから書くようにと指示したのだが、なかなか書けそうもない。大学生でこれなのだから、ましてや高校生や中学生に同じような指示を出しても難しいかもしれない。

(4)次は仕上げの段階なのだが、課題作文である。

一応は、横に座っている人とディスカッションして、ブレーンストーミングして、テーマを選び、それに関連するキーワードを英語で10個見つけ出させた。それに基づいて、そのキーワードを全部使って英作文させるという課題を与えたのだ。学生たちはやはり悪戦苦闘して書いていた。

(5)最後は評価の話をする。

作文を教員がチェックして、それを評価していけばいいのだが、学生の数が多いのでそれは難しい。できるのは、横の人と作文を交換しあっって、互いにチェックし合えばいいのだ。ただ、このシステムは大学生ならば、ある程度は有効だが、中学生や高校生にこのシステムを応用すると、どうなるのか。とにかく、なにをどうチェックするのかという基本を教える必要がある。

日本人向けのライティングの方法

コミュニケーションに基づいた新しいライティング指導法だが、教科書に書いてある方法は、ネイティブの子供達が作文していく場合の方法である。英語をほとんど使わない子供達に、この方法は役に立つのか。日本人の子供向けのコミュニケーションを意識したライティングの方法を確立する必要性がある。
今日の私の学生は将来に教壇に立ったときに、このライティングの方法で、子供達のライティング能力を上げられるのか。そんなことを考えると昔の英作文の授業も捨て難いよさがあるなと感じる次第である。あるいは昔風の英作文しか可能ではないのではと思ったりもするのだ。

Chatgpt による添削

英語の文章を書いて、Chatgptに添削してもらうと非常に分かりやすく正確に添削してくれる。これは驚異的である。これからの時代のライティングの授業はChatgptを意識したものにならざるを得ないであろう。