シラバスの種類
教科書を見るとその内容にはいろいろな工夫がされている。文法シラバス、構造シラバス、機能シラバス、場面シラバス、話題シラバスなどに基づいて配列が考えられている。
文法シラバス
文法シラバスとは文法事項が並んでいるシラバスである。文法事項の配列が、易しい事項から難しい事項へと並んでいる。例えば、be 動詞から 一般動詞(規則変化動詞→不規則変化動詞)へ、現在形から過去形へ次に未来形という順番である。教科書の最後まで進むことで、文法体系が一通り理解したことになる。なお、Krashen の自然習得順序仮説を参考にして、学習者が習得する項目から並べていくことも可能である。
文法事項の配列でも、いわゆる文法書は、たとえば、文とは何か、主語とは何か、文型とは何か、という風に、体系的に並んでいるが、必ずしも初めが易しくて最後が一番何回であるとは限らない。これらは、一通り文法知識を心得た学習者が、自己の知識の整理整頓として学ぶ性格であり、一般的な教科書とは異なる性格のものである。
文法理解に重点が置かれているので、導入された文がどんな状況で使われるか、実用的な場での使い方が学習者には理解できないという欠点がある。
構造シラバス
『英文構成法』(金子書房)という参考書では、英文を五文型、さらには動詞の型によって分類して、この参考書を完了することで、英文の構造が一通り理解できるようになる。五文型に関しても SV, SVC, SVO, SVOO, SVOC のように易から難という配列になっている。(必ずしも、SV 型の方がSVOC 型よりも簡単とは言えないのだが、そのことはここでは触れない)
場面シラバス
英語が使われる場面を想定して、それに基づいたシラバスである。観光英語の教科書では、入管手続き、ホテル、スーパーマーケット、レストラン、観光地巡り、タクシー、電車、などの場面をいろいろと想定して内容が組まれている。さらには、サンフランシスコ、ロスアンジェスル、シカゴ、ニューヨーク、ボストン、ワシントンD.C. という風に場所で区分けする場合もある。これらの場合でも、最初に出てくる英文はやや易しくて、段階的に難しくなっていく工夫がされている。
話題シラバス
話題によって内容が配列されている。場面シラバスと似ている部分がある。小学生用ならば、家族、数、色、動物、買い物、などのように身近なトピックを提供するシラバスがある。
機能シラバス
機能によってシラバスを並べていく方法である。挨拶する、依頼する、謝罪する、質問する、拒絶する、のように機能ごとに区分けするのである。例えば、依頼する機能を覚えることで、Please give me …. Can I get …. I wonder if I could have … などの表現をまとめて覚えるのである。
様々なシラバスを混ぜたもの
実際のシラバスでは、このどれかに特化したものは少なくて、多少なりともいくつかのシラバスを併用している。例えば、入管の手続きの場面では、主にbe 動詞を学ぶように作られており、ホテルでは、一般動詞を学ぶようになっているということがありうる。文法シラバスと構造シラバスが併用されていると考えられる。ただ、どのような場合でも、当初はやや易な表現で、最後は難しい表現へと発展していくという傾向は見られる。