認知スタイル(Cognitive style)


学習者が学習や問題解決で取る認知スタイルには、次にあげる5つの要因で決定されると言われている。

① Field Independence and Dependence

:全体から必要な部分だけを独立してとらえる能力を「場面独立型」と呼ぶ。この能力は、分析的論理的思考力と関連が強く、一般には人が成長し自立するにつれて伸びてゆく。一方「場面依存型」は、全体を直感的に理解する能力であり、環境に依存しなければならなぃこどもに強く見られる傾向である。言語教育に関して言えば、この能力の高い学習者は、情況の中から発話の意味全体をとらえようとするので、自然な状態での言語獲得(acquisition)を得意とし、一方「場面独立型」の能力は、ある部分を集中してドリルする言語学習(learning)を助けると言える。したがって一般的には、この能力の高い学習者が学業成績は優秀であるとされる。

② Reflectivity and Impulsivity

:前者は構えが慎重で誤りを極力さけようとするのに対し、後者はミスを気にせずスピードがある。同じ問題でも、前者は正答を得ることが多いが時間がかかり、後者は反応は早いが誤りを犯す可能性も高いことになる。自分のベースで学習を進めることができるブログラム学習は、この点では学習者の多様性に対応している。

③Tolerance and Intolerance of Ambiguity

:あいまいな点があっても一応受け入れて先に進むか、すぐ拒絶するかの差である。許容度がかなり高くないと、細部にこだわりすぎて良い学習者(successful learner)になれないが、またあまりに高すぎても、規則に対して無関心になり内在化でない。この両者の間にバランスが取れていることが理想的かもしれない。

④Broad and Narrow Category Width

:カテゴリ一を大きく取るか小さく取るかの差です。たとえば1つの文法規則の適応範囲も学習者によって幅に差が生じる。

⑤Skeltonization and Embroidery

:記憶する時に、中心となる骨組みだけを覚えようとする人と、素材以上のさまざまな事柄を付加する傾向の人があると言われている。学習者の認知スタイルは、上述の要因が重なり合って多様な現れ方をするから、それに対応する知識が教員に必耍だということになる。

ただ個人の認知スタイルは決して一定ではない。

特定の課題に対する自信や、人間関係、心理状態などで常に変化する。ですからある学習者の一般的な認知スタイルを理解することはそれなりの意味はあるが、それだけで個別化した理想の指導法を設定しようとするのは無理がある。(出典:H. D. Brown, Principles of Language Learning and Teaching  米山・佐野著1985.『新しい英語科教育法』大修館)