専門性向上のためのポートフォリオ(Portfolio)

ポートフォリオとは

ポートフォリオとは元々、書類人れやファイルを意味する。日本では、主に 「総合的な学習の時間」の評価法として導入された。ポ一トフォリオ評価では、 児童や生徒が作成した作文、レポート、作品、テスト、活動の様子がわかる写真やVTR、自己評価の記録と教師の指導評価の記録などをファイルに蓄積して整理する。ポートフォリオ作成を通して、子供の自己評価を促し、また、教員も子供の評価を行うことができる。
ポートフォリオは教員の自己教育にも有効であり、教員のポートフォリオは「テイーチング・ポートフォリオ」と呼ばれることが多い。教員にとっては、生徒や学生に現れつつある能力や知識の省察を促して、学生の教えることに対するより真正な評価が可能になる。

ポートフォリオの分類
ポートフォリオには大きく分けて、評価のためのポ一トフォリオと成長のためのポートフォリオがある。評価のためのポートフォリオは,教育機関が出す資格や免許取得レベルに達しているか教員の力量を評価することを目的としたものである。評価は機関の指導者が示すポートフォリオの作成のガイドラインに従う。ポートフォリオに含めるものは、実践授業のビデオ、授業関連資料、同僚、生徒などによる授業評価、生徒に関する資料である。しかし、日本において評価のためのポートフォリオはほとんど活用されていない。

成長のためのポートフォリオは、ポートフォリオ作成の過程で、省察が促されることが最も重要である。ポートフォリオ作成に取り組むことで、頭の中だけで思い出すだけでなく、自分の教育実践を対象化し、客観的に分析・整理できる。また、ポートフォリオを用いて他者と意見を交わすことで、新しい視点に気づいたり、多角的な自己分析を行うことができる。
学生には大学在学中に作成したレポートは保存しておくように述べてある。一覧表として見ることができればそれらは立派なポートフォリオとなる。場所を取るなどの問題点があれば、近年はレポートなどはパソコンで作成するのであるから、データ化して一括して保存することもできる。それらをポートフォリオとして保存することもできる。

授業の評価と改善
個人または同僚と協同して授業を振り返り改善していくために、計画、実践、評価、改善(PDCA : Plan-Do-Check-Action)のサイクルで考えると実践しやすい。
授業を計画する際に、前回の授業を振りかえり、課題に気づきその解決策を考える。授業の実践中は、メモ帳を持参して、生徒の様子を観察し気づいた課題を書きとめる。授業後には今回の授業を振り返り、課題に気づきその解決策を考える。
• 生徒や授業に関する課題として、以下のような例が考えられる。
• 生徒の興味・関心を把握しているか。生徒の興味、関心を引き出す導入(活動)の工夫がされているか。
• 生徒の緊張感、集中心を維持できるように工夫や指導がなされているか。
• 生徒の発話に対して、適切なフィードパックができているか。
• 生徒への発問の内容や意図は明確か。
• 各活動の時間配分が適切か。

理論に照らし合わせて、授業を振り返ることも有効であるが、以下のように 生徒からのフィ一ドパッククや学習成果も振り返りの参考にすべきである。
• 生徒からのフィードバックや学習の成果に基づいて、授業を批判的に評価し、状況に合わせて変えることができる。
• 日常の授業で生徒を観察するのみならず、生徒に授業についてアンケート調査し、なぜ理解できなかったのか原因を分析する。
• 成果については、定期テストにおいて、生徒が点を取れなかった箇所を確認して、授業のどこに問題点があったのか確認する。

その対策として以下のようなことが考えられる。
• 活動の時間配分を変える。
• 活動の難易度を変える。(例:生徒がペアで話す活動に積極的に活動してい なかった場合、話しやすいテ一マに変更したり、会話の雛型が書かれた補助プリントを作成する。)
• 活動の内容を変える。(例:生徒の読む力がついていない場合、教えていな かった語彙の推測やスキミング、スキャニングなどの読解ストラテジーを教える。)
個人の振り返りに関するものであっても同僚と協同して振り返る方が望ましい。職員室で、先輩の先生や同僚の方に相談することが望ましい。

参考文献:JACET教育問題研究会『新しい時代の英語科教育の基礎と実践』三修社