インド研修ツアー雑感(2004年)
昨年の九月、インド研修旅行団の一員として、ムンバイ、ハイデラバード、デリーと三都市を訪れた。十日ほどの滞在であったが、自分にとり、初めてのインドだったので、印象深い訪問となった。そこで感じたことを思いつくまま報告してみたい。
デリーで、トクトクというバイクを車に改造したような乗り物に乗った。感心したのは、どんな短時間の信号待ちでも、運転手がエンジンを止めることである。一行を運んでくれた小型バスも、我々が買い物などで、ちょっとバスから離れる時は、運転手はエンジンとエアコンを切る。ガソリンを一滴でも節約しようという態度である。日本ならば、運転手はエアコンをつけっぱなしであろう。
ハイデラバードのCIEFL では、様々なセミナーに参加した。セミナーは先生方の研究室で行われたが、意外だったのは、どの研究室にも本がほとんどないことであった。先生方の自宅でも本は少ないそうである。日本では、大学院生でも何千円かの本を平気で買い、下宿は本で山積みということもある。その点、インドの先生と学生は図書館を最大限に活用している。CIEFLの図書館には様々な本があったが、ほとんどが何度も読まれたらしく手垢で汚れていた。図書館で一心不乱に読書している人々を見ると、気合いが入っていることが分かる。手元に本がないというハンディにもかかわらず、CIFELの教授や学生たちには独創的な研究が多いと聞く。エアコンのきいた部屋に、ほとんどの本を「つんどく」だけ、という日本の研究者は大いに恥じるべきだろう。
惰眠をむさぼっている日本の将来危うし、と強く感じたことがあった。ある日、一行はパラシャー教授の家に招待された。教授の弟子も数名来ていたが、そこで、コンピュータに詳しい青年と話しをする機会があった。彼は分かりやすい英語で、インドでは英語力を利用してソフト開発が盛んであり、外国からも注文が殺到して、この国の経済発展のきっかけになっている、と教えてくれた。若くて柔軟な頭脳、英語力、パソコンの3つが揃えば、ソフト開発は可能である。インドのシリコンバレーと呼ばれるバンガロールという都市が急成長していると言う。彼の話を聞いているうちに、CIEFLの図書館で一心不乱に勉強していたあの迫力で、10億近いインドの人々が情報産業に乗り出す姿が浮かんできた。日本は太刀打ちできるだろうか、と自分は心配になってきた。
そんなこともあり、インド旅行では、日本を憂え、ちょっぴりpatrioticになった自分であった。