スピーキングにおける2つの形式

スピーキングだが、2種類の形式があると考えられる。一つは会話である。互いにやり取りをする会話Interactive speakingである。もう一つは発表である。Public speaking のように一方的に話しをする場合である。従来は、スピーキングはスピーキングとして一つのカテゴリーと考えられていたが、相手と一対一の会話をする場合と、多数の聴衆を相手に話す場合は、分けて考えた方がいいという考えになった。

スピーキングにおける3つの機能

スピーキングには3つのコミュニケーション機能がある。一つ目は、儀式的なコミュニケーションである。二つ目は、情報を提供するコミュニケーションである。三つ目は、相手を説得したりするためのコミュニケーションである。

(1)儀式的なコミュニケーション

儀式的なコミュニケーションは、いわゆる挨拶のことである。教員が教室に入ると生徒たちにむかって Good morning.とか Hello. などと言う。また、授業が終わると See you tomorrow. Have a good day. などと言うのは、授業の開始や終わりに交わされる儀式的なコミュニケーションである。個人的なやり取りならば、How are you. あるいは、Nice to meet you. とか Nice talking to you. が交わされる。これらも儀式の言葉である。
これらは、定型的な表現が決まっているので、学習者はそのまま覚えることになり、教員側からの指導はさほど難しくない。毎回授業でルーティンとして使用すること、また生徒同士で言い合うように指導することが大切である。

(2)情報を提供するコミュニケーション

情報を提供するコミュニケーションには、聴き手のリスニング能力も大切である。情報を得ようとするために積極的にリスニングする態度が必要である。そのために、有効な活動として下記のような活動が提唱されている。

Information gap: 基本的にペアで行う活動で、生徒Aと生徒Bが持っている情報が異なり、互いに会話をして情報交換をして、その情報の違いを埋めていくという方法である。

Interview: Find someone who ~ という活動がある。例えば、生徒たちに、Find five people who have a cat. というテーマを与えて教室内で移動しながら互いに質問をさせる。Find five people who have a cat but don’t have a dog. のように複雑にしてゆくことも可能だ。

Role play: 架空の役割を与えてそこで会話をさせる。例えば、マクドナルドの店員と顧客のやりとりを想定させて行わせる。メニューを用意して、顧客となった生徒が自分の好みに応じて注文をする。そして支払うことまで行うのである。

Game: Twenty Questions 生徒Aがある事物を頭の中で選ぶ。例えば、an apple とする。すると他の生徒たちはYes/No questions で質問してゆく。Is this an animal? Can I eat it? Is its color red?のような質問を行い、20の質問のうちに答えるというゲームである。
Show and tell: 生徒が何からのトピックで発表して、それについて他の生徒からの質問を受けるものである。これはPublic speaking の要素があるし、また Interactive speaking の要素がある。ただし、実際の教室では、他の生徒が質問をすることは少ない。その場合は、教員が生徒を指名して質問をするように促すことが必要である。それでも質問がない場合は、教員自らが質問することである。とにかく、コミュニケーションが成立するように心がける必要がある。

(3)相手を説得したりするためのコミュニケーション

相手を説得するためのコミュニケーションは、難しい面がある。聴き手から積極的なリスニング態度が得られない場合がある。例えば、嫌がる相手から金を借りようとする場合は、かなりの説得能力が必要である。日本語でも難しいのであるから、ましてや、外国語で説得する能力を身につけるのはかなり難しい。ある程度、定型的な文を提示して、その文を暗記していくことが必要である。
教室では、相手を説得する必要性のある場面に出会うことは少ない。どうしても、「虚構」の場面設定になるので、積極的な会話にならない場合がある。その場合、擬似的な場を設定するものとして、ディベート(debate)活動が有効である。たとえば、田舎に住むことと都会に住むことはどちらがいいか。Which do you like to live in, the countryside or city areas? 夏休みは海に行くのがいいのか、山に行くのがいいのか、Which do you like to go, to the sea or the mountain, in the summer vacation?というようなテーマを与えて、議論させることで、説得の技能が磨かれていく。その場合は、事実(fact)を示すことで説得力が高まることを生徒が実感できればしめたものである。混雑の度合い、物価、娯楽や文化施設の数などを示すことで説得力が高まる。

形式中心とメッセージ中心

教室で行われる会話の練習では、パタン・プラクティスが行われることがある。教科書に、以下のような文があってペアで練習したとする。
Is this a pen?
Yes, it is a pen.
Is that a book.
No, it is not a book.
これらの練習はプレコミュニケーション活動にはなるが、本来のコミュニケーションではない。最初から互いにどれがペンであり、どれが本であるか分かっているので、構文練習に過ぎない。これらのような練習は形式中心(focus on forms)である。生徒たちは飽きてしまうことが多い。
望ましいのは、実際に情報がやり取りされるメッセージ中心(focus on message)の練習である。前述の information gap, twenty questions, interview などの活動は相手の知らないメッセージのやり取りであり、メッセージ中心の活動であると言えよう。